▽英オックスフォード大学出版が発行する『The European Heart Journal』の612日付オンライン版は、50歳時点で収縮期血圧(上の血圧)が130mmHg以上だった人は、血圧が低かった人と比べて、後に認知症を発症するリスクが高くなる可能性のあるという論文を掲載しました。論文の筆頭著者でフランスの国立保健医学研究所のJessica Abell氏は「このことは、正常高値血圧(130-139mmHg)でも脳に悪影響を及ぼす可能性があることを示唆している」と指摘しています。

 

▽このブログでも、認知症発症と高血圧症の関連性を過去に何度か取り上げています。最近では2016年4月の「米フレミンガム研究関連論文が認知症の発症率は30年間で低下、高血圧の予防はアルツハイマー型認知症を予防」です。URL:http://livedoor.blogcms.jp/blog/plap/article/edit?id=48385855

 

▽この認知症と高血圧症の関係が、英国の医学雑誌でも取り上げられたのです。さて今回の研究ですが、対象は英国の公務員8,639人(男性67.5%、女性32.5%)です。1985年から2003年の間に血圧を6年ごとに計4回測定し、2017年まで認知症の発症を追跡して、高血圧と認知症の関連性を調べています。

 

▽特徴は、50歳時点、60歳時点、70歳時点の血圧に焦点を当てて解析したことです。その結果、社会人口学的因子など様々な因子で調整した後の解析でも、50歳時点で収縮期血圧が130mmHg以上だった人は、130mmHg未満だった人と比べると、その後に認知症を発症するリスクが1.38倍に上っていました。

 

▽さらに45歳と61歳の間に収縮期血圧が130mmHg以上だった期間が長いほど認知症の発症リスクは高まっていました。ただ60歳時点と70歳時点の収縮期血圧と拡張期血圧は、いずれの年齢でも認知症の発症リスクとは関連性がみられませんでした。

 

 

▽Abell氏によると、高血圧は一過性脳虚血発作や脳白質の損傷、脳への血流不足などを引き起こす可能性が指摘されています。これと併せて、中年期の早くから血圧が高い状態が続くほど認知症の発症リスクが高まることが今回の研究で示唆されたため、Abell氏は「健康寿命を延ばすには中年期の血圧を正常に保つことが重要だ」と強調しています。また米アルツハイマー病協会のHeather Snyder氏は「この結果は、脳と心臓の健康は直接関係するとした既存の報告を裏付ける。認知症予防のため、この結果をどう生かしていくか、真剣に考えるべきだ」とコメントしています。

 

 

▽正常高値血圧でも心筋梗塞や脳卒中、心不全、腎不全のリスクが2倍に高まるという最新エビデンスに基づき、米国心臓病学会と米国心臓協会は2017年に診断基準を130/80mmHgに引き下げました。これに対し欧州高血圧学会のガイドラインの診断基準は従来通り140/90mmHgのまま据え置いています。今回の英国の公務員約8,600人を対象に解析した研究結果は、欧州の高血圧の診断基準に警鐘を鳴らすはずです。

 

 

参考文献:

Association between systolic blood pressure and dementia in the Whitehall II cohort study: role of age, duration, and threshold used to define hypertension.


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