▽昨年は、リニア中央新幹線建設に伴うクリニックの移転という大事業の対応に追われました。またクリックの院長を長男と交代したことも重なり、ブログの更新ができませんでした。誠に申し訳ありませんでした。

▽さて、久しぶりのブログはピルの安全性を書きます。BRCA遺伝子は、誰もが持っている遺伝子の1つです。DNAの傷を修復して、細胞ががん化するのを抑える働きがあります。

この遺伝子が変異している(通常と異なっている)と、卵巣・乳腺のがんになり易いことが知られています。ただ、あくまでも「なり易い」のであり、「なる」のではありません。

このような背景から、BRCA遺伝子の変異者にはピルの使用が控えられる傾向がありました。

▽ところが最近、米国産婦人科学会の雑誌に、BRCA遺伝子の変異者にもピルの使用は明らかに卵巣がんを減少させることが明確とする論文が発表されました。文献1.

▽この論文は、BRCA遺伝子の変異がない一般の人へのピルの使用で、卵巣がんが50%減少するのは既定の事実とも明言しています。

▽今回は国際的な共同研究でBRCA遺伝子変異者へのピル投与と卵巣がん発症との関係を明確にしました。

BRCA遺伝子は、BRCA1とBRCA2の2種類があります。共同研究は、BRCA1変異者3989人とBRCA2変異者2445人を対象に後方視野的にピル投与と卵巣がんの関係を精査しました。

▽結果です。ピル使用は明らかに卵巣がんを減少させました。ピル使用が長期にわたるほど、また、ピルを直近まで使用している人ほど卵巣がんの減少はより明確でした。

▽ピルを長期使用した人は、卵巣がんを減少させる効果が15年以上も維持されていました。BRCA2変異者でも同様の傾向が認められました。

▽さらにBRCA遺伝子変異者へのピルの使用は、乳がんを増加させる危険もないとする論文も発表されています。文献2 

▽2015年4月15日。ブログNo.52「乳房と卵巣を摘出した女優のアンジェリーナ・ジョリーはがん遺伝子検査会社には商売繁盛の神様」に、BRACA遺伝子変異の遺伝子検査の背景を書きました。興味を持たれた方は、このブログhttp://p-lap.doorblog.jp/archives/44283934.htmlも読まれてください。

 

1. Schrijver LH, et al. Oral contraceptive use and ovarian cancer risk for BRCA1/2 mutation carriers: an international cohort study. Am J Obstet Gynecol. 2021 Jan 22. Online ahead of print.

2. Schrijver LH et al. JNCL Cancer Spectr 2018;2:pky023.