▽オープンアクセスの科学雑誌『PLOS ONE』が3月8日配信したpublished online によると、更年期女性に対するホルモン補充療法(HRT)は、心臓の働き(心機能)のみならず、心臓の構造にも良好な変化をもたらし、心臓疾患リスクを減らすことが英国の研究で明らかになりました。

 

▽この研究は、英国の国民保健サービス(国営医療サービス事業)で集めた「中高年の保健データベース(バイオバンク)」を基にしています。それによると、HRTを平均8年以上受けた女性は、受けていない女性と比べて、左心室と心房の血液量(容積)が減少し、左室から拍出される血液量の減少が認められました。著者は「HRTによる左室と左房の容積の明らかな減少は、HRTが心臓・血管系の健全性と関連する」と指摘しています。

 

▽HRTの心臓への効果は、60代後半の年齢が進むほど明確になっていました。従来のHRTの心臓への影響は、CТ検査で心臓・血管系の動脈硬化を調べていましたが、この研究は心機能評価で最も信頼性の高い検査法とされる心臓МRI検査で評価しています。

 

▽著者のクイーン・メアリー・カレッジ(ロンドン大学群)のMihir Sanghvi氏は「HRTと微妙な心臓の形態と機能改善の関係が初めて明らかにされた」と述べています。今回の成績から、HRTは心臓の機能と構造に悪い影響を与えていないばかりか、心臓の健全性に貢献していることが分かります。この事実は、大きな意味があります。なぜなら、HRT施行中の数百万人にとっては朗報です。HRTは心臓に是か非か、未だ学会でも論争のあるところだからです。

 

▽研究では、バイオバンクから条件を満たした症例を検討しています。バイオバンクには、40-69才の50万人(2006-2010年)の身体調査、血液や尿など生化学的成績が登録され、さらに最初の登録者では10万人に心臓МI検査が施行されています。

 

▽調査では、閉経前後で心臓МRI検査が施行され、心臓疾患のない1604人を対象としました。内訳は、513人(32%)がHRTを3年以上施行し、平均HRT施行期間は8年、HRT開始年齢の平均は47.6歳(HRT群)でした。残る1091人はHRT未施行(非HRT群)。心臓МI検査時に78人(15%)は、HRT施行中でした。

 

▽HRT群の平均年齢は、非HRT群と比べて高く(65.4歳対61.3歳)、平均閉経年齢は(50歳対51歳)でした。HRT群では、左心室のEDV(収縮直前の左心室の血液量)が、非HRT群と比べて有意に低下し、拍出量も低下していました。左心房の心室収縮終了時の血液量も低下していました。

 

▽HRT開始時期と閉経年齢の関連性は、HRTによる心房、心室の血液量に変化を与えませんでした。左心房と左心室の血液量の減少は、心臓の健全性を表しています。HRTの心臓への効果は、年齢が高くなるほど明らかになっていました。HRTの心臓への効果は、心臓MRI検査が施行された60代後半の女性で最も現れていました。この結果から、60才以下の閉経後女性に対しHRTは有意義な治療法と言えそうです。