過去の多くの研究から、妊娠高血圧症候群や早産では、胎児は母体へのストレスに対する防御反応としてホルモンの分泌を増加させることが明らかになっています。

母体へのストレスホルモンや胎児発育・成熟によって、これらホルモンの胎児・胎盤循環内の濃度は上昇します。増加したホルモンは低分子なので、胎盤にそれらのバリアがなければ容易に母体側へ流出し、母体血管を収縮させ、また子宮を収縮させることが考えられます。

わたしたちは1970年頃から、胎盤に存在するこれらホルモンの胎児-母体バリアを研究してきました。その結果、これら胎児が産生するホルモンを強力に分解・不活性化し、母体側への流出を制御する胎盤酵素を特定しました。


水谷栄彦 小林浩;妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)と早産の病因解明および新治療法開発の必要性

日医雑誌 第139巻・第3号/平成222010)年6月  より編集