妊娠高血圧症候群の病因は、現在全く不明です。妊娠高血圧症候群が重症化すると妊婦の血圧は急激に上昇し、そのため脳血流が障害されて意識が消失し、全身が痙攣状態となり、さらに増悪すると脳内出血へと進展します。

胎児を娩出させると妊娠高血圧症候群は軽快するため、産科医は母体を優先し、妊娠を中断させ、極小未熟児を娩出させざるをえません。

妊娠高血圧症候群には、一般的な高圧薬はほとんど効果がありません。妊娠高血圧症候群の治療薬としては、現在、硫酸マグネシウムが世界の主流ですが、硫酸マグネシウムは本疾患の根幹である血圧上昇に有効ではありません。

硫酸マグネシウムは、妊娠高血圧症候群の重症化(急激な血圧上昇)による意識消失と痙攣発作の際に、抗痙攣作用を期待してワンショットで使用されていました。ところが、最近では、本剤が妊娠高血圧症候群の基本的な治療薬として長期持続投与されているのです。

 

水谷栄彦 小林浩;妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)と早産の病因解明および新治療法開発の必要性

日医雑誌 第139巻・第3号/平成222010)年6月  より編集