私の過去のブログを見ていただければ、現在妊娠中毒症や切迫早産で使用されている薬剤(ベータ2刺激剤、硫酸マグネシウム)などの胎児への副作用の重大性に関しては、容易にご理解頂けるとおもいます。

 私は、産婦人科医として、自らはベータ2刺激剤、硫酸マグネシウムなどを一切使用せず、現在まで産婦人科臨床を行ってきました。

 妊娠中毒症の治療には、エストロゲンとプロゲステロンの暫増療法を、また切迫早産にはプロゲステロンを主に、切迫早産の重症例にはエストロゲンとプロゲステロンの暫増療法を行い、ベータ2刺激剤や硫酸マグネシウムの使用を避けることができました。

 私のブログ:NPO法人 妊娠中毒症と切迫早産の胎児と母体を守る会の第一回総会が開催されました。ここに記載しましたように、1975年に私が静岡済生会病院勤務時代に重症妊娠中毒症の方を ホルモン治療のみで治療した方とそのお嬢さん(現在2児の母)も第一回総会参加されました。妊娠中毒症の治療として、エストロゲンとプロゲステロンの暫増療法の安全性は証明されているのです(NPOホームページ参照)。

米国で、2011年2月4日。米国連邦食品医薬品局(FDA、日本の厚労省に相当)は、天然型の黄体ホルモン剤(製品名マケーナ)を、切迫早産の予防に使う薬として承認しました。その際、黄体ホルモン剤を優先的に審査し、通常の薬よりも早く市場に出回るよう配慮しているのです。

その20日後の24日。妊婦の切迫早産を予防するため、72時間を超えてβ剤(テルブタリン)の長期使用を禁じました。米国では、安全な薬への切り替えが進むように、危険な薬を追放するというFDAの心意気が伝わってくるようです。

天然型の黄体ホルモン剤(製品名オオホルミンルテウムデポー)は日本では古くから、切迫早産治療薬として認可されて、現在も使用可能です。

 現在黄体ホルモン剤の膣座薬を切迫早産の予防薬として、厚生労働省の認可をとるべく、某製薬会社が臨床治験を始めているようですが、米国FDAは、黄体ホルモン剤の膣座薬を切迫早産の予防薬としては、認可しなかったようです。

 その理由はよくわからないのですが、ここで強調しておきたいのは、2011年2月4日米国連邦食品医薬品局(FDA)が、切迫早産の予防薬として認可した、天然型の黄体ホルモン剤(米国の製品名マケーナ、17-αプロゲステロンカプロネート)は、現在日本では使用可能なのです。胎児に危険なベータ2刺激剤や硫酸マグネシウムの代わりに、何故私が1970年始めから妊娠中毒症や切迫早産治療にエストロゲンとプロゲステロンの暫増療法を産婦人科の先生方が臨床応用されないのか?不思議でなりません。

 

 

文献:

 

水谷栄彦他、妊娠中毒症に対する性ステロイド療法。日本新生児学会誌、1978;14:534-560

 

Mizutani S et al. Positive effect of estradiol and progesterone in severe preeclampsia . Exp. Clin. Endocrinol.1988;92:161-170

 

Naruki M, Mizutani S et al. Changes in maternal serum oxytocinase activities in preterm labour. Med. Sci. Res. 1995;23:797-802