塩酸リトドリンは胎児ばかりでなく妊婦をも危険に晒します。
 リトドリンを発売した中堅製薬会社が厚労省に提出した資料では、1986年4月のウテメリン(リトドリン)の承認以来、2002年12月末までの16年8か月の間に、妊婦に現れた重い副作用251例が報告されている資料が手元にあります。

その内訳は、血液に含まれる細胞成分の一つで、外部から体内に侵入した細菌・ウイルスなど異物の排除をする白血球が無くなってしまう無顆粒球症関連が132例、に水分が染みだして溜まった状態で呼吸が障害される肺水腫87例(うち1例は死亡)骨格筋を構成する横紋筋が壊死を起こし筋細胞中の成分が血液中に浸出し、筋肉が障害されて筋肉痛や脱力感等の症状があらわれる横紋筋融解症が32例報告されています。これらの副作用発症者が最多だった投与日数は、無顆粒球症関連では22-28日(66例)、肺水腫では29日-60日(22例)、横紋筋融解症では1-3日(12例)と報告されています。肺水腫でも投与開始1-3日での発症が16例、無顆粒球症関連でも7例が、それぞれ投与開始から14日以内に発症しているのです。したがって、短期投与でも重い副作用を発症した妊婦が少なからずある事が推察されます。


 しかし多くの妊婦に重い副作用が起こっている実態が2002年に厚労省に報告されているにもかかわらず、
ウテメリン(塩酸リトドリン)は現在も広く早産予防に使用されています。
 早産予防の適切な薬が開発されていないため、産婦人科医が健康保険で承認されたβ剤を使っているのは止むえない事です。しかしながら、2005年には奈良県の大淀町の妊婦さんが、ウテメリンの副作用で死亡されているのです。すなわち、切迫早産治療でリトドリンを使った症例で肺水腫が起こり、亡くなった妊婦さんがおられます。この事件は昨年奈良地裁で和解が成立しています。(参考) 
 このような実態があるにもかかわらず厚労省はβ剤の長期使用を放置しているのはいったいどうゆうことなのでしょうか。
ウテメリン(塩酸リトドリン)の母体への重篤な副作用を考えるとおそろしくなるのは、私だけなのでしょうか?

参考:毎日新聞「妊婦死亡損賠訴訟:病院側と和解成立 被告側過失、言及せずーー桜井/奈良」奈良地裁平成23年5月17日和解(4000万円)報道、子宮収縮抑制剤「塩酸リトドリン」による肺水腫死亡事案medicallaw.exblog.jp


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