切迫早産の薬〈塩酸リトドリン)が、新生児の心臓に障害を与える可能性があることを、皆さんはご存じでしょうか?

切迫早産に広く使われている薬は、喘息の治療薬と基本的に同じ薬(β2刺激薬、β2剤と呼ばれる薬剤)です。喘息の発作は気管支の筋肉が痙攣〈収縮〉する状態で、β2剤はその収縮を抑えます。切迫早産では、子宮の筋肉が収縮状態ですので、同じような考え方でβ2剤が使用されています。
 この薬は長期使用すると、喘息の治療薬と同様に、妊婦の心臓への負担が大きくなります。
 実はβ剤のリトドリンは1981年5月、新生児の心臓に障害を与えることが、ドイツで報告されています。流・早産の予防のため、リトドリンを妊娠24週間から8週間投与された妊婦から生まれた新生児25人を調べたところ、3人に局所的な心筋の壊死(細胞が死滅)、3人に心筋細胞の脂肪変性(本来の心臓筋肉細胞が脂肪細胞に変化)、14人に心筋内膜(心臓の内側の細胞)下の心筋細胞の核変性(細胞は核と細胞質で出来ている)が発生していたのです。ドイツのベーム医師らが、そういう論文を発表しています。

文献: Bohm N, Adler CP.Focal necrosis, fatty degeneration and sub endocardial nucler polyploidization of the myocardium in newborns after beta-sympathicomimetic suppression of premature labor. Eur J Pediatr.1981;136(2):149-157.