2012年06月

マグネシウムの副作用は胎児の脳へも影響?

皆さんは、現在切迫早産や妊娠中毒症の治療目的で医師が使用しているマグネシウムが、動物実験ですが、母獣(ぼじゅう)(動物では、母体(ぼたい)とはよびません)がストレスに置かれると、胎仔(動物では、胎児(たいじ)

胎仔(たいし)と呼びます)の脳の血液の流れを悪くして、さらには死亡させる原因となっている事をご存じですか?

 1996年に国際麻酔学会雑誌に米国のアラバマ大学産科麻酔教室のJDレイノルド先生らが発表した論文からです。

実験内容です:1.羊の妊娠期間は、平均147日ですが、実験では、妊娠120日のものを使用しています。2.胎仔にカテーテルを入れて、胎仔にマグネシウムを注入し、胎仔の酸素濃度を見ています。3.母獣へのストレスは、体重1kgあたり5ccの血液を10分かけて採血(血液量を減らす)し、5分休み、同様な採血をさらに3回(計4回)行っています。4.胎仔へのマグネシウム注入量は、マグネシウム0.25g(低用量のマグネシウムがヒトの切迫早産に使用されているときの胎児の濃度と同じ量)と0.30g(中用量のマグネシウムが切迫早産に使用されているときの胎児の濃度と同じ量:Creasy RK, Resnik R.Maternal –fetal medicine.Philadelphia:WB Saunders,1994 )です。



結果です:1.胎仔への生食水注入では、投与前の胎仔の酸素濃度と投与後で変化ありませんが、マグネシウムの投与前と後では胎仔の酸素濃度は約30%下がりました。2.マグネシウムの投与は、母獣へのストレス(採血というストレス下におかれている母獣にマグネシウムを投与)で胎仔の死亡を増加させ(0.25gで20%死亡、0.3gで50%死亡)、3.また母獣へのストレスに耐えるべく、コントロールの生食水注入では増加する脳血流が、マグネシウムの投与で減少する事が明らかになっています。(ストレス下におかれている母獣の胎仔は血流を上げて酸素を取り込む反応をする。これが通常の反応すなわち生理食塩水だけの場合。これがマグネシウムになると通常の反応ができなくなっている。)



JDレイノルド先生らは、妊婦へのマグネシウムの投与は、胎児の状態を悪化させるのみでなく、脳血流の減少がもたらす胎児の脳神経系の発達への影響にも警告を出しておられます。

論文:Reynolds JD et al. Magnesium sulfate adversely affects fetal lamb survival and blocks fetal cerebral blood flow response during maternal hemorrhage. Anesth Analg 1996;83:493-9.





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ドクター水谷のお産講座 No3

 今回のテーマは「低出生(ていしゅっしょう)体重児(たいじゅうじ)」についてです。

低出生(ていしゅっしょう)体重児(たいじゅうじ)とはその名前のとおり小さい赤ちゃんのことです。昔、「小さく生んで大きく育てる」という考え方がもてはやされ、小さい赤ちゃんを楽に産んであとから栄養をたっぷり与えて大きく育てようというものでした。

 その頃、イギリスのある有名な産婦人科医が小さく産まれた赤ちゃんのその後の成長を克明に調べました。そうすると、成長してから糖尿病、脂質異常、心臓病、発達障害、などが多いことがわかってきたのです。

 



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ドクター水谷のお産講座 No2

 今回のテーマは「胎盤と女性ホルモン」についてです。

 長く産婦人科の臨床にたずさわっていていつも感じることのひとつは、ヒトの胎盤の働きがいかに重要かということです。なぜなら、妊婦さんとおなかの中の赤ちゃんをつなぐ唯一の器官は胎盤だからです。そして出産すると、赤ちゃんが生まれたあとを追うようにして同じところから出てくるのです。約9ヶ月間ほんとうにご苦労様でした。
 この重要な胎盤は健康なお産のときと、病気で難産したときとでは大きな違いが見られます。

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海外では妊婦へのマグネシウム使用についてどう考えられているのでしょうか?

昨年水谷理事長がマグネシウムについての考え方を外国へ発信されたところ、ドイツのある有名な大学医学部の先生から次のようなメッセージが返ってきました。

「水谷先生へ、

先生の動物実験の結果はたいへん興味深くまた重要なことを教えてくれています。

私どもは以前、生まれたときの体重が小さい子供(低出生体重児)を調査したところ(4800人)、この子達は生まれた直後から人工保育器で呼吸補助がされていました。この子達の母親はマグネシウムを出産のときまで投与されていました。この子達のその後の経過は残念ながら死亡に至ったケースが多かったのです。」

Prof. Dr. Wolfgang Gopel

Neonatologie, Padiatrische Intensivmedizin

Klinik fur Kinder- und Jugendmedizin

Universitatsklinikum Schleswig-Holstein

Ratzeburger Allee 160

23538 Lubeck




 マグネシウムは筋肉の収縮を抑える薬ですから、もし胎児に行くと呼吸機能を妨げます。さらに早産未熟児は肺の中の潤滑液がまだ十分ない状態で生まれますから、なおさら呼吸が難しくなります。
 
 次回の「水谷先生のお産講座」はこの
(低出生体重児)についてです。数年前から低体重未熟児が世界的に増えています。これはたいへん大きな問題です。私どもNPOはもっと情報を集めてこの問題の解決の糸口を見つけて活動していきたいと考えています。

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マグネシウム剤を長期投与された妊婦から生まれた新生児では

マグネシウム剤を長期投与された妊婦から生まれた新生児では、心臓に障害が出やすくなっている可能性が示唆される動物実験があるのをご存じですか?

私は、妊娠中毒症患者で使用されている量のマグネシウム剤を、生まれつき血圧の高い妊娠ネズミ(非妊娠時も高血圧)に長期投与したところ、胎仔の心臓の血管が極端に形成不全になっている事実を明らかにしました。マグネシウム剤は、胎盤を容易に通過します。この事実から、マグネシウム剤を長期投与された妊婦から生まれた新生児では、心臓に障害が出やすくなっている可能性が示唆されます。(2007年の日本産科婦人科学会と日本病態プロテアーゼ学会で発表および文献:Ishii M et al. Early Hum Develop 2009;85:589-594

 下図(a)は正常の胎仔の心臓筋肉の顕微鏡写真で中空のところが心臓の筋肉へ血液を送る血管で、(b)にはその血管がほとんどありません。


胎仔の心臓筋肉の顕微鏡写真 (400倍に拡大)


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