わたしたちは、長く臨床の場で考えてきた産科医療が抱える2つの問題、すなわち妊娠高血圧症候群の原因と陣痛発来(早産)のメカニズムの解明を目的とした研究を継続してきました。わたしたちの研究は、妊娠高血圧症候群と早産治療を目指した新しい日本発バイオ医薬品の開発を提案するものです。
英国のバーカー医師は、未熟児で生まれた子どもは生活習慣病やうつ病の発症頻度が高いことを見出して、未熟児のバーカー仮説として知られています(1)。NICU(新生児集中管理室)で生存し、発育していく多くの未熟児の今後のフォローアップは重要な課題です。
最近脚光を浴びている最近脚光を浴びている再生医療には、多額の研究費が国から与えられています。再生医療による個々の臓器再生も重要な医療であると思います。しかし、周産期医療(新生児、胎児学)はさらに重要な医療ではないでしょうか?
まず、わたしたちは自然の保育器である妊娠子宮に関してさらなる研究を行い、次の世代の誕生を支援して、再生医療を必要とすることのない健全な生命誕生に全力を傾注すべきではないでしょうか。
(1)Baker DJ: Maternal nutrition, fetal nutrition, and disease in later life. Nutrition 1997; 13: 807-813.
水谷栄彦 小林浩;妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)と早産の病因解明および新治療法開発の必要性
日医雑誌 第139巻・第3号/平成22(2010)年6月 より編集