妊娠高血圧(妊娠中毒症)に関する記事がyahooニュースにも掲載されていました。
皆さんもご覧になりましたか?
http://news.finance.yahoo.co.jp/detail/20121119-00028064-diamond-column
ところで、子宮の働きは収縮することであり、分娩予定日のころ、子宮が胎児からの信号をキャッチして収縮するのが陣痛です。本来、陣痛が起こってはならない妊娠中期に子宮が収縮すれば、胎盤の血液プールの容量が小さくなって、ダムの底が水をついてしまいます。
植物でもそうですが、生物の急速な発育のなぞは、ホルモンの作用と思われます。急速に発育する胎児も自ら盛んにホルモンを作っています。ところが、母体になんらかのストレスが加わり、そのストレスが胎児へと及びますと、胎児は敏感に反応して自らの発育に必要な量以上のホルモンを分泌します。胎児がつくるホルモンの中で、酸素不足になると著名にその量が増えるのがバゾプレシンで、このホルモンは子宮や動脈を強力に収縮させます。
プールの水量はプールへ水を入れる水道の蛇口(動脈)をしめればなくなってしまうことを考えてください。ストレスによって増える胎児のホルモンは、子宮や動脈を収縮させ、プールの水量を減らす危険があります。
やや難しい話でしたが、本来、子宮が収縮してはならない妊娠中期に子宮が収縮し、胎盤血液プールの血液量が減少することが、妊娠中毒症(高血圧)の発症原因のひとつであることの可能性が、ご理解いただけたことと思います。
ホームドクターすこやかに”愛知県医師会編 1993年9月1日毎日新聞社発行の分担執筆妊娠中毒症から編集
胎児の発育のためには、心拍出量や循環血液量の増加が必要とされますから、妊娠時には血管抵抗を極端に下げる場所が必要です。それはどこでしょうか。
ところで、子宮の中の胎盤は重量500グラムもあり、その土台は子宮の内壁にくっついています。この胎盤の土台と子宮の内壁の間には母体から大量の血液(1分間に約500ミリリットル)が流れ込んで、プールのようになっています。胎盤は、このプールから胎児へ酸素や栄養分を送り込む働きをする大切な臓器です。そこで皆さん、川の流れとダムの関係を思い浮かべて下さい。川も上流ではいくら流れが早くても、ゆったりと水をたたえたダムでは流れがありません。胎盤のプールは血管抵抗を下げ、血圧を一定に保つ大切なダムのようです。
ホームドクターすこやかに”愛知県医師会編 1993年9月1日毎日新聞社発行の分担執筆妊娠中毒症から編集
ホームドクターすこやかに”愛知県医師会編 1993年9月1日毎日新聞社発行の分担執筆妊娠中毒症から編集
豊かな国、日本での生活は皮肉なことに妊婦さんにとって妊娠中毒症の危険が隣り合わせであるといえる、と以前の記事で述べました。
最近では、妊娠中毒症の三大症状(むくみ、たんぱく尿、高血圧)のうち、高血圧が最も大切なことから、妊娠中毒症とは、妊娠による高血圧症であるとする考えが世界的な傾向です。そこで、妊娠中の血圧について少し考えてみましょう。
ところで、ヒトの血圧とは、どのようなものでしょうか?それは心臓からその搏動とともに血管へ押し出される血液量(心拍出量)と、血管の緊張の程度(血管抵抗)とを掛けたもの(血圧=心拍出量×血管抵抗)といえます。
胎児が発育するため必要とされるからでしょうが、妊娠の後期には、妊娠していない時と比べ、心拍出量は40%、循環血液量(全身の血管の中をぐるぐる回っている血液量)は50%も増加します。従って、先ほどの血圧の考えを当てはめると、妊娠後期の妊婦さんは、その妊娠が順調でも、みな高血圧になってしまうことになります。
ホームドクターすこやかに”愛知県医師会編 1993年9月1日毎日新聞社発行の分担執筆妊娠中毒症から編集