2013年05月

ヒトのES細胞(胚性幹細胞)の新聞報道

いわゆる、「クローン技術」を使うと、さまざまな細胞に変化するといわれるヒトのES細胞(胚性幹細胞)から患者と同じ遺伝情報をもつ心臓の筋肉や神経の細胞などをつくることができる。つまり、山中伸弥氏が作製したiPS細胞(人工多能性幹細胞)と同じような再生医療に応用することが可能であると報道されていました。

 

アメリカ、オレゴン健康科学大学の、立花真仁(まさひと)研究員らの研究チームは、健康な女性の卵子をつかって、その遺伝情報の入った「核」を取り出し、そこへ他人の皮膚細胞の核を移植しました。150個ほどまで細胞分裂させたがそれ以上育てるのは困難でした。ネズミやサルでは成功した技術でしたが、やはりヒトでは難しかったのです(5月16日(木)読売新聞)。

 

2011年11月21日の日本経済新聞の記事によれば、世界にさきがけて胚性幹細胞(ES細胞)を使用して、ヒトでの臨床試験に取り組んできたアメリカのバイオベンチャーのジェロン社が、再生医療から撤退すると報じられました。このわずか1年余りの方針転換に、再生医療の事業化がいかに難しいかをあらためて知らされました。

 

はたして、2011年からこの分野で飛躍的な進歩発展があったのでしょうか?また、今後「クローン技術」はヒトの様々な難病の治療法として期待できるのでしょうか?私は疑問に感じるのですが、皆様はいかがでしょうか?

インクレチン関連薬はプラセンタのプロテアーゼ研究から始まった

糖尿病の夢の治療薬として、ジペプチジルペプチダーゼⅣ(DPPⅣ、CD26)の阻害剤が現在世界で広く使用されています。このややこしい名前の酵素の研究は、世界に先駆けて日本で行われた事を皆様ご存じでしょうか。DPPⅣ研究は永津俊治先生(名古屋大学名誉教授)と池原征夫先生(福岡大学名誉教授)中心に、1970年代に日本で行われました。

一方この酵素が分解する多くのホルモンの中にインクレチンがあるのですが、1970年当時はこの事実は分かっていませんでした。インクレチンとは、食事摂取に伴い消化管から分泌され、膵β細胞に作用してインスリン分泌を促進するホルモンの総称で、今ではこのホルモン自身も糖尿病の夢の治療薬として使用されています。

私(水谷栄彦)も、1981年に、ヒト胎盤にジペプチジルペプチダーゼⅣが存在するのを見つけ、浜松医大の法医学教室の実験室の片隅でDPPⅣをヒト胎盤から精製しました。同じ時(1981年)ドイツのMentleinらも、私と同様の方法でヒト胎盤にジペプチジルペプチダーゼⅣの存在を報告しました。

その成績を日本産科婦人科学会で発表したところ、座長の先生が、あなたの発表は、全く意味がありませんねと皮肉を言われた事を今でも覚えています。

それから12年後の1993年、Mentleinらが、ジペプチジルペプチダーゼⅣがインクレチンの分解酵素(インクレチンの働きを無くする)である事を発見して、1996年 Demuth( Mentleinの指導で)らが DPPⅣ阻害剤が2型糖尿病治療薬となる事を明らかし、彼らは糖尿病の夢の治療薬の基本特許をおさえたのです。

一昨年名古屋でDemuthと久しぶりに会いましたが、彼はプール付きの豪華な住まいに住み、巨大な研究所(プロビオドラッグ社)の所長として活躍していることを話してくれました。

内科(糖尿病)の先生方には、皆様が今処方しておられる糖尿病の夢の治療薬の基礎作りは、日本で行われたことを是非とも記憶に残して頂きたいとおもいます。
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