2013年06月

学術論文の目的は?―降圧薬「ディオバン」に関する“黒い噂”

人気の降圧薬「ディオバン」に関する“黒い噂”が、世間の耳目を集めている。恥すべき事件としか言いようがない。

発端は、今年4月、イギリスの有名な医学雑誌『ランセット』が掲載した京都大病院の循環器内科の医師が投稿した論文だった。高血圧症の患者さんたちにディオバンと別の降圧薬を飲ませた市販後臨床研究が「strange(ストレンジ)=奇妙」という指摘だった。


臨床研究は京都府立医科大病院と東京慈恵会医科大で別々の時期に実施された。どちらの参加者(患者)もともに約3000人。この大規模集団で別の降圧薬を飲んだ患者さんたちの平均血圧値と血圧のばらつき具合が、研究終了段階でピタリと一致していた。

その後、この2つの大学病院以外に3つの大学病院でも類似の市販後臨床研究が実施され、どの研究にもディオバンのメーカー・ノバルティスファーマの社員が、大阪市立大非常勤講師の肩書で参加していた。こういう行為は、臨床研究の信ぴょう性が保たれなくなるため、利益相反行為とみなされ、厳に慎むべきこととされている。

ところが、参加した社員は、データ解析というコアの部分を担当していた。苦労してデータを集めても、解析次第ではどうにでもなることは、データ解析に携わった方には分かっていただけると思う。それほど重要な役回りだ。

「奇妙な一致」と社員がデータ解析していたことから、論文の改ざんやねつ造が指摘されている。5つの大学のうち京都府立医科大にはノバルティスが1億円以上の寄付金を提供していたことも分かった。同大学はノバルティスとの取引を全面停止、同社の損害額は年間約3億円に上るという。

残念なのは、 事件で痛手をこうむったはずの日本高血圧学会の理事長や東京大教授らが、医師向け雑誌の広告記事で別の製薬会社のディオバンと同じARBというタイプの降圧薬を「強力かつ選択的な降圧効果」などと持ち上げていることだ。

ノバルティスも臨床研究のデータがまとまると、“偉い先生”を集めた広告記事を医師向けの雑誌などに掲載し販促活動を進めていた。


そういう販促活動の歪が、ディオバン事件を生んだのである。大学の市販後臨床研究の論文がねつ造され、その論文を製薬会社が販促活動に使った。おまけに大学には製薬会社から寄付金まで渡っている。これは、贈収賄事件あるいは詐欺事件と受け取られても仕方がない。大学、いや、医師はこの事態をもっと深刻に考えないと、国民の決定的な医師不信を招きかねないだろう。

切迫早産治療薬(硫酸マグネシウム)の使用が1週間以内に制限されました(米国FDA)

2013.5.30日、米国のFDA(日本の厚生労働省)は切迫早産の治療に、硫酸マグネシウムの注射は5-7日までとする勧告をだしました。
その理由は、妊婦への硫酸マグネシウムの長期投与は、胎児の骨発育を傷害して、胎児・新生児が骨減少、骨折などを引き起こす危険性があるためとしています。
P-LAPブログの過去のブログ(2012年5.18,6.11,6.28,10.21,10.22)で硫酸マグネシウムの妊婦への注射は胎児への悪影響が心配される事を、度々述べてきました。今回は米国のFDAが胎児の骨発育が傷害される事を指摘しました。日本の現在の周産期医療に重大な問題提起とおもわれます。


May 30, 2013
http://www.fda.gov/womens

FDA Recommends Against Prolonged Use of Magnesium Sulfate to Stop Pre-Term Labor

FDA is advising health care professionals against using magnesium sulfate injection for more than 5-7 days to stop pre-term labor in pregnant women. Administration longer than 5-7 days may lead to low calcium levels and bone problems in the developing fetus.

The Pregnancy Category for the drug is changing to D from A. Pregnancy Category D means that there is positive evidence of human fetal risk, but the potential benefits from using the drug in pregnant women may be acceptable in certain situations despite its risks.

Read the drug safety communication for more information for health professionals and patients.

切迫早産の薬と若年男性自殺増加の関係

ジョンズ・ホプキンズ大学という医学では世界的に有名な研究機関がアメリカにあります。2009年に、ここの教授の一人、フランク・ウィッター医師は早産の治療に汎用されているベータ刺激剤に関するこれまでの報告を分析してある医学誌に発表し大きな話題になりました。80報を超える報告からウィッター医師はベータ刺激剤は妊娠初期から中期にかけて妊婦さんへ投与することは胎児にとって極めて危険であるという結論を出しました。

動物を使った実験では、ベータ刺激剤を投与された場合その胎仔の脳組織に異変が起こり、その結果、生まれた幼動物の能機構が損なわれ異常な行動変化をするようになる、というものでした。

次に、ウィッター医師はヒトでの疫学研究報告を詳細に調べた結果、実際、ヒトでも妊娠期間中のベータ刺激剤の使用により脳機能に悪影響を及ぼしている可能性がわかってきたのです。

例えば、妊娠初期から中期にかけてベータ刺激剤を投与された妊婦さんの新生児を投与されていない場合とで、出生年や出生場所、性別など多くの要因でそろえて比較したところ、明らかにベータ刺激剤を投与されていた妊婦さんの新生児に自閉症の症状がより多くみられたのです。

さらに調べていくと、ベータ刺激剤を長期間投与されていた妊婦さんの新生児では、認知機能や運動機能の発達の遅れがみられ、その後の学校での成績も劣ることが明らかになってきました。また、心臓の機能や血圧にも影響し、心拍数や血圧が通常よりも高くなる傾向がみとめられました。これは、動物実験でみられた結果とも一致しています。

これらの事実を総合すると、ベータ刺激剤を投与されていた妊婦さんの新生児は、その後の成長に大きな障害を伴う危険性が否定できません。一度限りの胎児への危険な薬物の暴露は一生の問題になっていくのです。

この問題について、社会の認識はまだまだ足りません。小児の心臓病や青少年の自殺の問題などにも関連する可能性についてこれまで誰も否定していません。わたしたちはもっと胎児と妊婦さんの安全性について敏感にならなければなりません。

私の手元に厚生労働省の人口動態統計があります。このなかに30歳未満の男女の自殺者数の推移を示したグラフがあります。以前から私は大きな疑問を持っていました。なにゆえに、1998年あたりから急激に自殺者が増えているのか?そしてそれは、20歳から29歳の男性で際立って多いのです。(1)

以前、私のブログでも紹介しましたが、イギリスの疫学者バーカー博士の理論を覚えておられますか?このなかでバーカー博士は低出生体重と児の成長過程における自殺との関連性を調べました。(1)外国人なので少し体重は大きめですが、出生体重別に男児と女児を18歳から26歳時まで追跡しました。その結果、よく言われるようにうつ症状が自殺にみられる割合は確かに多く(70%)また、うつ症状の児では生まれてからの体重増加が遅いことがわかりました。おそらく貧困による栄養状態の悪化も原因でしょう。しかし、生まれた時点の低い体重だけで自殺との関連を説明することはできませんでした。その後も、多くの調査が行われていますが、確かなことは自殺の主な原因の一つはうつ症状であるということです。2001年に発表された研究結果でも低出生体重児はその後の精神障害やうつのリスクは高いことが示されています。しかもそのリスクは男性でより高いのです。(2)

さらに、2009年に発表された重要な研究があります。妊婦さんに、ベータ刺激薬を2週間を超えて高用量を投与したとき、生まれた赤ちゃんの神経のバランスが狂うことを突き止めました。(3)これは交感神経と副交感神経という二つの神経の作用がうまく保てないことを意味します。出生後に自閉症や精神障害、認知障害、運動神経の低下、高血圧症の危険性が高まるのです。とくに自閉症は自殺の原因の70%以上を占めているといわれています。アメリカの疾病予防センターはある踏み込んだ調査をしました。少年のうつ病患者で事故などで死亡した人の剖検をしたところ、脳神経細胞の数がうつ病ではない場合に比べてきわめて多く、あきらかに胎児期の脳神経の発達に異常があることがわかりました。(4)これらの研究結果から言えることは、胎児期に脳の発達に悪い影響を受けると、生まれてからもその影響は続いていき、もとには戻らないということではないでしょうか。

胎児期、つまり赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいるときは、それほどデリケートなのですね。とくに生まれる前の薬の投与や環境は重要です。未熟で生まれてもリスクがあることから早産の予防はほんとうに重要な課題なのです。



自殺女性





















自殺男性





















(1)D.Barker et al.British Medical Journal 1995;vol 311:1203
(2)C.Thompson et al.British Journal of Psychiatrics 2001;179:450-455
(3)F.Witter et al.American Journal of Obstetric and Gynecology 2009;261(6):553-9
(4)E.Courchesne et al. Journal of American Medical Association
2011;306(18):2001-10



 



卵子提供の仲介

卵子提供の仲介 子供を守る法整備に踏み出せ(5月15日付・読売社説)
生殖医療で子供を授かる女性が増えている。政府は子供の権利を守る法整備に着手すべきだ。その内容を簡単に紹介します。不妊患者の家族、医師らで作るNPO法人は、他人の卵子提供を受ける患者の喜びの言葉を紹介した。ただし、こうした不妊治療に伴う様々な問題を見過ごしてはならない。まず、家族関係が複雑になることだ。生まれてくる子供には、出産した「産みの母」と卵子提供者である「遺伝上の母」という2人の母親ができる。子供が出自を知る権利をどう担保するか、も重要な課題だ。倫理上、卵子の売買規制も求められよう。そもそも、国内の卵子提供による体外受精は、長野県の医師が1998年、初めて実施し、厚労省の審議会は2003年、卵子提供を容認する報告書をまとめた。その間にも、家族や友人から卵子の提供を受けた体外受精で、80人以上の子供が誕生している。海外に渡航し、卵子提供を受けて出産するカップルも増えている。 ルールがないままでは、子供が成長した時に不利益が生じる恐れがある。政府は対応を急がなければならない(5月15日付・読売社説)



NPO法人が卵子の提供の仲介をするようですが、おそらく必ずその行為の裏では金銭のやり取りが行われると思われます。私は日本産科婦人科学会の理事をしていたとき、理事会にターナー症候群(卵巣のない女性)の会から、他人の卵子提供を認めるような要望書の提出があり、理事会で討議した経験があります。その時、私は以下の発言をしました:
1.他人の卵子提供を認めることになれば、親子の定義の根幹自体が崩れる。
2.卵巣のない女性がわが子を望む事自体、根本的な認識の誤りである。少々過激な発言だったかもしれませんが、皆様は、当時の私の発言をどのようにお考えでしょうか。

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