2013年08月

「生むわがまま」と「生まないわがまま」

妊婦の採血で胎児に染色体の病気があるかを調べる新型出生前診断が、臨床研究として始まっています。

胎児の染色体異常が高い精度で分かるのですが、その検査の結果次第で「生命の誕生」を拒むことがはたして許されるのでしょうか? 「命」をあまりにも軽く考える医療行為と私には思われます。

一方、子供がほしいという人の希望だけで、第三者からの卵子を提供することが許されるのでしょうか?

産んだ女性とは遺伝的な母子の関係がないにもかかわらず、赤ちゃんは「実の子」と偽られて生まれ、育てられる。まさしく生命の根源をもてあそぶ犯罪に近い行為ではないでしょうか?少なくとも、私にはそう思えます。

親子の定義は一体どこにあるのでしょう? 養子縁組なら別ですが、他人の卵子の提供を認めれば、その根本が崩れます。親子ではありません。そういう関係を、私たちは何と呼べばよいのでしょうか。

このような、「生むわがまま」と「生まないわがまま」を認め、協力する医療行為を、私たち医師はどのように考えるべきなのでしょう。

卵子がほしいというヒトの欲望や染色体異常が分かった赤ちゃんを抹殺する医療が限りなく進めば、私たちにどんな未来があるのでしょうか。私は想像が出来ません。

話は飛躍するようですが、科学の発達と戦争に勝つという欲望が原子爆弾を生みだし、広島や長崎の悲惨な惨劇を生み出しました。私たちは忘れてはならないのです。

あの長崎の鐘や広島の20万人の惨劇を想い起こしましょう。ヒトの欲望には際限がありません。ほしいものを1つ手に入れたといって満足する人は稀です。むしろ、1つほしいものが手に入ると、次にほしいものを探し出し、手に入れようとします。

そういう、ヒトの欲望、いや、“わがまま”に、医療はどこまでお付き合いすべきなのでしょうか。今一度立ち止まって、医師、患者双方が「命の誕生」を真剣に考える時期だと思います。


早産の長期間のマグネシウム使用を原則禁止(FDA)の警告をロバート・ミッテンドルフ先生(当NPOの名誉会員)からご連絡いただきました。

私どものNPOは、理事長のダイヤビルレディーズクリニック院長水谷先生のネットワークを生かして、日本国内だけではなく海外から、情報提供や当NPOの活動に関する助言をいただいております。

アメリカ合衆国ボストンに拠点があるロヨラ大学(Loyola)は世界でも有数の産科・婦人科の主導的立場にある研究機関です。ロヨラ大学産婦人科学部門の名誉教授、ロバート・ミッテンドルフ先生は当NPOの名誉会員で、理事長とも親交が深く、今回理事長がご執筆しました医学論文(近日刊行)に対して賛同され激励のお言葉をいただきました。

 

Dear Shigehiko,
In regard to matters dear to our hearts, congratulations on the acceptance, and upcoming publication, of your manuscript. As you may already know, the U.S. Food and Drug Administration (FDA) recently recommended against prolonged use of magnesium sulfate to stop pre-term labor due to bone changes in exposed babies.

With best regards for many further successes, Bob Mittendorf


Robert Mittendorf, MD, DrPH
Professor, Emeritus
Loyola University
Chicago

2013Augustrd 3ed

 

「(水谷)栄彦先生、

このたびは貴殿の論文が国際医学誌に掲載されることになり心よりお祝い申し上げます。すでにご存知と思いますが、米国医薬食品局(FDA;日本の厚生労働省に当たるもの)は最近、早産の予防のための長期間のマグネシウム製剤の使用を原則禁止する声明を発表しました。これは胎児の骨の発育に障害を及ぼす恐れのあることがわかったためです。

今後のご発展とご成功をお祈りいたします。

ボブ・ミッテンドルフ ロヨラ大学名誉教授、シカゴ アメリカ合衆国」

201383

 

私どもNPOでは以前からマグネシウム製剤の胎児に対する危険性を訴えてきました。すでにドイツでは長期の使用は禁止されていましたが、今回米国でも問題視されたことから、これらの胎盤通過性の危険な薬物の替わりにより安全な薬剤の開発に向けての機運が進んでいくことを期待しています。HIVのときにも経験したように、長期間にわたって危険性が浸透していくことは当初はなかなか理解されにくく、対策が遅れがちになります。マグネシウム製剤は、妊娠高血圧症でたびたび起る母体の痙攣発作、すなわち()(かん)、のときの一時的な対症療法としては有効ですが、長い間投与し続けると母体だけでなく、胎児にたいへん危険な影響があることが報告されています。これを機に日本国内でもその認識が高まり安全な治療薬の啓発に向けての活動が大きく進展することを願っています。

 

 

私どもNPO「妊娠高血圧と切迫早産の退治と母体を守る会」ではホームページからの情報発信のほか書籍も販売しております。ぜひご参考にしていただければ幸いです。

 

「妊娠中毒症と早産の最新ホルモン療法」水谷栄彦編著 南龍寿著 静岡学術出版 \800-

ディオバンの特許をもつ武田がその開発に立ち遅れたワケ(その2)二人だけの話のはずが・・・

 

私は、前回のブログでのべましたように、Zimmermannジンマーマン、写真最前列左から7人目の髭の研究者)の研究成果を驚きのあまり、メモをとりながら聞きました。彼の講演中ではその研究を始めた動機などが、一切述べられませんでした。私は、講演を聞きながら、この素晴らしい研究には、何かその研究の拠り所とするものがあったに違いないと考えました。彼の発表直後のワインパーティーの席で、私は彼の近くで(耳元で)貴方の素晴らしい研究は一体どこにヒントがあったのですかと尋ねました。すると彼は少しためらってから、この考え方は、日本の製薬会社の特許にあり、それは武田製薬だと答えてくれました。

 

帰国後、私は疲れが残っていました。しかしアンジオテンシンゴードン会議でフランス・ディポン社のジンマーマンから直接聞いた話が耳を離れませんでした。それほど驚くべき話だったのです。

帰国して7日後、私は新幹線と阪急電車を乗り継いで、大阪市十三本町の武田薬品大阪工場に併設されていた研究所(現在は第九技術棟とよばれているようです)を訪問しました。基本特許を持つ日本の製薬会社が知らないところで開発が進んでいるのを知らせるのは、日本人研究者の一人として当たり前のことと思いました。

研究所では、当時の副研究所長が応接室で私を迎えてくれました。ただ名古屋から出かけて行った私に、お茶の一杯も出てきませんでした。

私は、ゴードン会議のワインパーティーでジンマーマンから直接聞いた話を副研究所長にそっくり伝えました。ところが、彼は驚くどころか、表情一つ変えません。そして、こう話しました。

「失礼ですが、そのお話は関西地区のある大学の教授から昨日お聞きしました」。

私は、ワインパーティーでジンマーマンと2人だけで話していました。だから、どうして有名大学の教授に伝わったのか。狐につままれた様で不思議でなりませんでした。

この1989年のアンジオテンシンゴードン会議には、日本人の参加者の数は少なかったのですが、武田薬品に私とジンマーマンの間で交わした話を、私より前に武田薬品に伝えた教授の教室から講演者として招かれた方もいらっしゃいました。多分、その教室のどなたかが、私たち2人の会話を、そばで聞かれたのかも知れません。

ただ、この情報はビッグでした。後日になって、高血圧分野では高名な別の教授が、武田薬品に伝えたとか、いろんな尾ひれをつけた話が出回っていたのは、事実を知っている者からすると、滑稽な話でした。

1つだけ確実なことがあります。武田薬品にビックな情報を伝えたのは、高血圧分野とは畑違いの産婦人科医(写真最後列)だったことは間違いありません。

その後、数年かけて武田薬品はブロブレスを発売し、私も愛飲?しています。

しかしジンマーマンの研究成果は、いち早くメルク社が買い取り、世界初のサルタン系降圧薬「ニューロタン」として発売。サルタン系降圧薬が、世界の降圧剤市場を支配する一歩を記しました。

ニューロタンとブロブレスの2剤からあとに登場したのが、ディオバンなどのサルタン系降圧薬なのです。



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