2013年10月

若い人の自殺(日本)増加の原因は?

前回のブログで「20代の自殺率が最も増加している」という情報をお伝えしました。では、この傾向は世界の中で見るとどうなるのでしょうか?

 

<先進国の15-34歳の死因>

 

フランス

ドイツ

イタリア

アメリカ

イギリス

韓国

日本

1

事故

事故

事故

事故

事故

事故

自殺

2

自殺

自殺

がん

殺人

がん

自殺

事故

3

がん

がん

自殺

自殺

自殺

がん

がん

(自殺対策白書)

 

このデータは実に重要なことを私たちに伝えようとしています。この表から、先進国で若い人の死因第1位は「事故」ですが、日本だけが「自殺」です。もう一つは先進国のいずれも自殺は若者の死因の3位以内に入っています。

なぜ、自殺はこのように世界の先進国に蔓延し、とくに日本で顕著に現れるのでしょうか?多くの専門家は、経済状況の悪化や就業ができない若い人々が溢れている状況を指摘しています。しかし、社会環境が厳しい時期はなにも現在だけではありません。過去にもそのような厳しい現実は多くあったのです。これほど容易に自殺を実行する背景はとても環境要因だけでは説明できません。

 

私は臨床医師・医学者として長年産科に取り組んできました。その経験から、事態はそれほど単純ではないと感じています。間違った医療やリスクの高い薬の投与から来る原因を見落としてはならないと強く感じています。

前回のブログでご説明したように、過去には胎児に影響がある薬剤が多く投与されているのです。その影響を受けたと推測される子供さんは現在20歳代から30歳代になろうとしています。ヒトの胎児は人類の数万年の歴史を僅か10ヶ月の妊娠期間で再現しながら発達します。私はここに原因の中心があると確信しています。つまり、お母さんのお腹にいる間が生まれてくる個人の最も重要で決定的な時期だと思うのです。この10ヶ月間で好ましくないことが重なると生まれてきた子供は大きなハンディキャップを背負います。しかし、この時期を何とか乗り越えて大きなストレスを被ることなく過ごせた胎児とお母さんは幸せです。

 

皆さんもぜひ産科医療の重大さを再認識いただき、ぜひとも我々の目指す安全な医療をご支援いただきたいと思います。


 

参考:Mizutani S et al. New insights into the role of aminopeptidases in the treatment for both preeclampsia and preterm labor. Expert Opin Investig Drugs. 2013 Aug. 10

若い人の就活自殺?これだけが原因?

20代の自殺率が最も増加している」・・これはインターネットで「自殺」を検索したときに最初に目についた見出しです。
「自殺白書」という政府が出す報告書があります。最近の自殺、とくに青少年の自殺についての統計数字を見ると身震いするような危機感を覚えずにはおれませんでした。じつに不可解なことが多いのです。白書には1989年から2011年までの22年間の年齢層別の自殺率、つまり20代、30代、40代、のように年齢層に分けてその層の人口に対する自殺死亡者数を見たものです。そうすると1989年、今から約24年前に自殺率が急激に上がっています。その後、若年層とくに20代の自殺率が右肩上がりに上昇していますがそれ以外の年齢層では2003-2004年あたりから横ばいかあるいは下降傾向です。それにも関わらず20代では上昇し続けているのです。
多くの理由付けがされています。とくに雇用情勢の悪化です。しかし、仕事が見つからないというだけで未来のある元気な若い人たちが簡単に自殺するのでしょうか?
私は医学者としてずっと産科に携わっています。臨床研究と基礎研究を何十年もやってきており、現在も臨床の傍ら基礎研究の論文を執筆しています。()  妊娠の病気には2つの厄介な病気があります。現在20代や30代の青年の中には、お母さんが妊娠中に切迫早産という病気に罹り、胎児、つまり今の青年たちの発育に影響したかもしれない危険な薬を投与されていた可能性があるのです。これらの薬は胎児の神経発達に影響し生まれてからうつや自閉症などのリスクを高めます。(2) またもう一つの妊娠の病気である妊娠高血圧症候群に有効な薬は現在もありません。唯一の治療は帝王切開して予定日よりずっと早い時期に胎児を娩出することなのです。これはすなわち、お母さんの生命を救うために未熟児の出産を人の手で行うというものです。未熟児はその後の成長に多くのハンディキャップを残します。この場合もうつ症状や自閉症といった精神障害のリスクが高まります。
私は近年の自殺者数が多いのは環境だけではなく、このような医学的背景もあるのではないかと強く疑っています。
読者の皆様はどうお考えでしょうか?最近の生活環境だけが若者の自殺を誘引していると思われますか?動物が自殺したというのは聞いたことがありません。なぜ人間だけが自殺するのか、しかも社会生活の悪環境が原因で。何かがおかしい・・と感じています。



(1)Mizutani S et al. New insights into the role of aminopeptidases in the treatment for both preeclampsia and preterm labor. Expert Opin Investig Drugs. 2013 Aug. 10

(2)Witter FR et al. In utero beta2 adrenergic agonist exposure and adverse neurophysiologic and behavioral outcomes. Am J Obstet Gynecol. 2009 Dec;201(6):553-9

卵子凍結・保存」がもたらす社会的混乱の可能性

日本生殖医学会の倫理委員会が、将来の妊娠を考える女性の卵子と卵巣組織の凍結・保存を認めるガイドラインを作成した、というニュースが流れた。

早速、生殖医学会ホームページのガイドラインに目を走らせた。がん治療など生殖能力低下という従来の「医学的適応」に、加齢で生殖能力が低下する可能性を懸念する「社会的適応」を追加していた。

未授精卵子の凍結・保存の対象は成人女性。卵子採取時の年齢は40歳未満。卵子の使用は45歳未満。20-44歳の間なら、極端な話、何時でも採卵して、何時でも使用できる、と受け取れる。

ガイドライン作成の背景を、倫理委員会はこう説明している。「近年の未授精卵子、卵巣組織凍結技術の急速な進歩と臨床応用の現況を考慮し、この技術の安全性を十分に確保し利用希望者による正確な理解を援助・促進するために必要な、利用者と提供施設双方において留意すべき事項を検討してきた」。

少し回りくどいが、「卵子凍結・保存」が急速に進歩して医療現場で実施されている現況を考えた結果、「卵子凍結・保存」を望む女性と、その希望を汲み取る医療機関の双方が、最低限守るべきルールをガイドライン化したようにみえる。

一方、最高裁大法廷は9月4日、婚外子の遺産相続分は結婚した夫婦の子供の半分とした民法の定めは違憲と判断した。遺産相続では、夫婦の子も婚外子も平等に扱えということだ。果たして「結婚制度が崩壊する」という反対意見と「判決は当然」という賛否両論が渦巻いている。ただ国会は民法改正を突きつけられた。

「卵子凍結・保存」の容認は、婚姻制度の崩壊はもとより、卵子売買や両親が不明な子供の大量発生の可能性すらはらんでいる、と言ったら、言い過ぎだろうか。臨床の場で卵子の取り違いもあり得る。例えば、若い頃、未授精卵子を保存した女性が、伴侶に恵まれず、医療機関を通じて子宝に恵まれない夫婦に渡る可能性はない、と断言できるだろうか。さらに営利目的の「卵子凍結・保存」が増加する恐れも否定できない。

「戸籍上、私は誰と誰の子供です」。冗談で、そういう言い回しをする。それは、両親がハッキリしているから言えるのであって、仮にそうでなかったら…。想像すると言葉を失う。

生殖医学会は、国民の意見を幅広く聴取する一方、日本産科婦人科学会と話し合って11月中にガイドラインを正式決定する段取りをしている。ここは、皆さんに是非、生殖医学会にご意見を届けてほしい。ホームページのアドレスはhttps://ec.sslcenter.jp/jsrm/opinion/input.php


日本生殖医学会が、「卵子凍結・保存」を望む女性とその希望を汲み取る医療機関の双方が、最低限守るべきルールをガイドライン化したのは画期的なことといえる。しかしながら、双方がその基準を厳格に守ると言い切れるのか。不安を拭えないのは、私だけだろうか?

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