2014年04月

胎盤アミノペプチダーゼ(P-LAPとAPA)が今後開発されるべき妊娠高血圧症治療薬として米国のメーヨークリニックの論文に取り上げられました。


本年医学雑誌
Drugs(薬剤)に米国のメーヨークリニック(Mayo 医科大学)の腎臓内科教室からの論文Drug Treatment of Hypertension in Pregnancy” 妊娠高血圧症治療薬と題する論文に、我々が長年研究してきました胎盤アミノペプチダーゼ(P-LAPAPA)が、今後開発されるべき妊娠高血圧症治療薬として取り上げられました。著者のブラウンらは、現在米国で妊娠高血圧症治療薬として使用されている一般的な薬剤を紹介し、またそれらの使用法について解説しています。その後半にNovel Therapeutic Targets and Emerging Treatments”としてその候補薬を解説していますが、その2番目にP-LAPAPAを取り上げています。その論文の最後の文章が、我々の考え方と共通する部分があります。

As abrupt decreases in BP may adversely affect uteroplacental perfusion,

treatment of hypertension mandates close maternal and fetal monitoring as the BP is lowered. The ultimate therapeutic goal is to prevent maternal complications without compromising fetal wellbeing.訳しますと、降圧薬による急激な血圧の降下は、胎児・胎盤循環の血流を悪くする可能性があるので、降圧剤の使用時には血圧降下の母体と胎児への影響に注意して観察しなければならない。究極の妊娠高血圧症治療薬は、母体の血圧を下げるが、胎児の状態を悪化させないものであるべき(一般的な降圧剤では、胎児・胎盤循環の血流を悪くする可能性がある)と結んでいます。




1.Mechanisms and management of hypertension in pregnant women.Brown CM, Garovic VD.
Curr Hypertens Rep. (2011)13:338-346. doi:10.1007/s 11906-011-0214-y

2.Drug Treatment of Hypertension in Pregnancy. Brown CM, Garovic VD.

Drugs. 2014 Mar;74(3):283-96. doi: 10.1007/s40265-014-0187-7.PMID:24554373


 


 

「生殖医療法案」を追う(3)代理出産の限定容認案 今国会提出へ


自民党の「生殖補助医療に関するプロジェクトチーム」(座長・古川俊治参院議員)が4月24日、配偶者以外の第三者からの精子や卵子の提供を受けた代理出産を限定的に容認する法案をまとめました。

不妊治療は、これまで公的ルールがありません。成立すれば初の法律となります。

法案は、精子・卵子のどちらかについて第三者からの提供を認めます。提供は匿名が原則です。出自を知る情報を生まれた子に開示する制度については、引き続き検討すると明記しました。


代理出産は、妻に子宮がない、または子宮は病気で失ったものの卵子はある場合などに限定して容認することにしました。


今国会での法案提出を目指すものの、党内には代理出産反対論も根強く、プロジェクトチームは代理出産を禁止する法案も検討しています。


法案とは別に民法に特例を設け、精子や卵子の提供で生まれた子供の親子関係も定め、代理出産を含めて出産した女性を母とするとしました。つまり代理母が法的な母親になるわけです。

さらに夫の同意を得て夫以外の精子で妊娠した時は、夫は自分の子ではないと否定できないとしました。


法案では、第三者がかかわる生殖補助医療を実施する医療機関は、厚生労働大臣の認定制とするほか、精子や卵子の売買を禁止。違反者には罰則(懲役や罰金)も設けます。

精子や卵子の提供を受ける夫婦の同意書は80年間保存するとしています。


法案が成立すれば、人類の真の幸せにつながるのか、それとも超えてはいけないルビコン河を超えることになるのか。

 このブログで先に書きましたように、科学技術の進歩は人類に恩恵をもたらす半面、予測もつかない危険性もある"両刃の剣”なのです。

アルベルト・アインシュタインをはじめ優れた物理学者の絶え間ない研究の成果が、広島、長崎の原子爆弾を生み出し、わが国は人類初の被害国になりました。

人間の欲望は限度がありません。どこかで線を引かないと、私達は知らず知らずのうちに、個人の欲望を追及するあまり、社会を混乱させる道を進み続けるかも知れません。

 

 

 

 

「ウテメリン」の重い副作用報告が集計期間で異なるのは何故?

 本年2月、切迫早産の治療に使われる「リトドリン」を製造・販売する中堅製薬会社が、産婦人科医師向けに「欧州における短時間作用型ベータ刺激剤に対する措置ならびに日欧におけるリトドリン(ウテメリン)の使用方法、有効性及び安全性の情報について」というタイトルの冊子を配布しました。ウテメリンというのは製品名です。

この製薬会社は、ウテメリンを開発した会社です。では、なぜ、そういう冊子を配ったのでしょう。

昨年10月25日、ヨーロッパの28か国が加盟するEU(欧州連合)の欧州医薬品庁(EМA、日本の厚労省のような存在です)が、妊婦や胎児に悪影響を与えるとしてリトドリンの産科適応の使用制限を決定しました。経口剤(錠剤)は承認が取り消されました。

製薬会社が驚いたのは容易に想像できます。冊子によると、医薬品医療機器総合機構(PMDA=パンダ)と国内での対応を協議、検討しているとしています。

その一方で①1欧州の決定に至った根拠②欧州におけるリトドリンの使用方法、有効性、安全性の評価に関する情報③国内のウテメリンの安全情報-について関連情報を集約致しましたと書かれています。

驚いたのは③国内のウテメリンの安全情報の記載内容です。

リトドリン注射剤(ウテメリン注射剤)の国内の安全性データの表記がそれです。

記載によると、『「使用成績調査」では、副作用276件(192例16.47%)。重篤な副作用はみられなかった。心血管系副作用である心悸亢進(動悸)及び頻脈について、累積副作用発現率の発現頻度を投与時期別に解析したが、投与期間の延長に伴う発現率の増加はみられなかった。』としています。

『「市販後安全情報」では、2001年1月1日―2013年12月31日までの13年間に自発報告にて報告された副作用を集計したところ、重篤な心血管系副作用は、母体で165件、児(胎児)で32件であった。このうち、肺水腫の報告が多く、続いて心不全が多い。副作用の報告数に関しては、近年急激に増える等、顕著な変化は見られていない。』と書かれています。

皆さん、このホームページの ブログ(2012-09-05) 「ウテメリンの副作用は胎児のみならず母体にもを思い起こしてください。この製薬会社が、かつて厚労省に提出した書類には次のように書かれています。

1986年4月のウテメリン(リトドリン)の承認以来、2002年12月末までの16年8か月の間に、妊婦に現れた重い副作用251例が報告されている。

副作用報告の内訳は、無顆粒球症関連が132例。肺水腫87例(うち1例は死亡)。横紋筋融解症が32例。これらの副作用発症者が最多だった投与日数は、無顆粒球症関連では22-28日(66例)、肺水腫では29日-60日(22例)、横紋筋融解症では1-3日(12例)。

肺水腫でも投与開始1-3日での発症が16例、無顆粒球症関連でも7例が、それぞれ投与開始から14日以内に発症しています。』このことから短期投与でも重い副作用を発症した妊婦が少なからずいたことが推察されます。



この製薬会社は、かつて厚労省に報告した副作用に関するデータを忘れてしまったのでしょうか。EМAがリトドリンの注射剤の使用を制限し、錠剤の承認を取り消したので、妊婦の重い副作用報告例が少なくなっている期間を選んだのかとうがちたくもなります。

なぜ、その期間(2001年1月1日―2013年12月31日)の重い副作用報告だけを記載したのでしょう。会社には(厚生労働省にも)1986年4月以降のデータが保管されているはずです。

冊子には「国内における対応が決定され次第、速やかに先生方へ情報をお伝えします」とも書かれています。重い副作用が確認され、海外では使用制限あるいは承認取り消しの事態になった以上、迅速かつ詳らかに情報公開したうえで、対応決定に参加するのが製薬会社の大切な役目ではないでしょうか。


 

「生殖補助医療法案」を追う(2)―人間の欲望は限度がない。


 前回のブログでは、有力政治家の話にスペースを費やしました。その方のケースは、アメリカで購入した卵子と夫の精子で出来た受精卵を自分の子宮に入れて赤ちゃんを出産しました。



遺伝子的にみると、赤ちゃんとその方とは血のつながりがない“他人”です。母親は、卵子を提供した外国人の女性になります。

 自民党の「生殖補助医療に関するプロジェクトチーム」が検討中の3種類の法案素案のうち、夫婦の依頼で代理に子供を産んだ女性(借り腹出産した女性)は母親としない案を撤回しました。

この案は、夫婦が家庭裁判所の許可を得て第三者の女性に代理出産を依頼し、依頼した夫婦を父親、母親とする内容で、依頼する夫婦側に最も配慮していたと評価されていました。

ところが、プロジェクトチームの会合では「代理出産する第三者の女性に大きなリスクを負わせるという倫理的な問題がある」とされ、撤回することになったそうです。

さらに会合では「代理出産を全面禁止すべき」との意見も出て、全面禁止案も検討することになりました。



実は、不妊は世界の先進国に共通する大きな悩みです。中でも日本は、不妊治療の専門クリニックの数と体外受精の実施数は世界で指折り多い国です。女性の社会進出を促す一方で、女性のみしか出来ない妊娠や出産について真剣に考えてこなかった“ツケ”が、一気に回ってきているのです。



女性の卵子は年齢が進むとともに「老化」していきます。35歳の女性が出産できる可能性は、20歳代女性の半分とされています。大学を卒業し男性と互角に仕事をこなし、結婚して子供を産みたいと考えた時、30歳代、40歳代になってしまっていたというキャリア女性の話は良く耳にします。

自民党のプロジェクトチームは、仕事に打ち込み、卵子が老化したキャリア女性のため、代理出産を認めると公に言ってるわけではありません。



しかしながら、法案が成立したら、生まれつき子宮に不都合がある女性や病気で子宮を摘出せざるを得なかった女性だけが、国内で代理出産するのを認められるのでしょうか。

皆さんは、卵子提供登録支援団体という組織があるのをご存じですか。若くして卵巣機能が低下して卵子が出来なくなった女性のため、卵子を提供してくれる35歳までの日本国籍の女性を登録する団体です。卵子を提供しても無報酬、つまり、営利目的ではないことが明記されています。

果たして、その卵子は、どこで、どう使われているのでしょうか。気になるところではあります。また営利目的ではないとしているのですが、確認する術はありません。



少し脇道に入りました。“本道”に戻ります。

生殖補助医療法案(仮称)は、恐らく議員提案になるでしょう。

まず自民党のプロジェクトチームの案が決まり、政務調査会の厚生労働部会の審議を経て総務会に諮られるでしょう。総務会で決定されると党議拘束がかかり、衆参の委員会や本会議で決定に反した党所属議員は処分されます。



科学技術の進歩は、1978年、英国ケンブリッジ大学のロバート・G・エドワーズ教授による、世界初の試験管ベビー・ルイーズちゃんの誕生につながりました。エドワーズ教授は2010年、ノーベル医学・生理学賞を受賞しました。

しかし科学技術は人類に計り知れない恩恵をもたらす半面、予測もつかない危険性もある"両刃の剣”なのです。

アルベルト・アインシュタインをはじめ優れた物理学者の絶え間ない研究の成果が、広島、長崎の原子爆弾を生み出し、わが国は人類初の被害国になりました。



科学の進歩は、人間の欲望を拡大しましたが、私の眼には「人間の欲望の爆発をもたらしている」ようにも映ります。

人間の欲望は限度がありません。私達は知らず知らずのうちに、危険な社会へと突き進んでいるのではないでしょうか?



ヒトの誕生、夫婦や親子の定義も揺るがしかねない重要な法案です。折に触れて、このブログで取り上げていきます。



 


 


 


 


 


 


 


 


 

「生殖補助医療法案」を追う(1)代理出産と卵子提供



今年1月から3月にかけて、自民党の「生殖補助医療に関するプロジェクトチーム」が、代理出産を条件付きで認める3種類の法案の素案(タタキ台)を作成したことが、毎日新聞や朝日新聞などに掲載されました。



代理出産は、わが国では認められていません。それを政権与党が、条件付きで認める法案づくりを進めている状況は、赤ちゃんの誕生に長年携わってきた1人として看過できません。今後、どんな法案になっていくのか。見守りたいと思います。



プロジェクトチームのリーダー(座長)は古川俊治参院議員(埼玉選挙区)。医師で弁護士。人気歌手の安室奈美恵さんの元夫でダンサーのSAM(サム)さんは従兄弟です。



昨年11月、座長に就任しました。その際、自身のFacebookに「先天的に子宮の形成が不十分な人や病気で子宮を摘出してしまつた人などに対し、技術的に子供を持つことが可能なのに制度で禁じるのはまずい。法律婚の夫婦でありながら妻が医学的に妊娠できないという場合に、日本で道を開くことが重要。個人の希望がかなう社会であるべきだ」と書き込んでいます。



古川さんの考え方は、日本学術会議が2008年4月に作成した報告書に書かれ、公式サイトでも公開されました。いわゆる条件付き代理出産容認論です。

自民党は、この方向で法案を作成しようとしているのです。



さて、わが日本産婦人科学会の考え方はどうでしょうか。現段階では法制度がありませんので、代理出産を会告で禁じています。法がない以上、認めない姿勢です。



その結果、どういうことが起っているかというと、何らかの異常があって子供に恵まれない夫婦が、仲介業者を通じて海外で代理出産を依頼するケースが増えています。夫婦の精子と卵子でできた受精卵を、第三者の女性の子宮を借りて出産させる代理出産が一般的です。「借り腹出産」とも呼ばれています。



それでは女性が高齢化して健全な卵子がなくなっていたらどうなるのでしょう。夫の精子と他の女性の卵子をもらって受精卵をつくり、自分の子宮で育てて出産する、あるいは、ほかの女性の子宮を借りて出産してもらう、などの方法があります。さらに、これに夫の精子が使えない場合もあるので、代理出産と一口に言っても、いろんなケースが想定できます。



他の女性の卵子をもらって(買って)の出産は、有力政治家の例を、皆様の中にも、週刊誌などで読まれた方が多いのではないでしょうか?生まれた男のお子さんは現在、健全とはいえないようですが、3歳になっています。



その方の場合、年齢が当時50歳で卵巣には健全な卵子がないため、アメリカに渡って外国人の卵子を購入。夫の精子で体外受精した受精卵を自分の子宮に入れて出産しました。切迫早産での出産でしたが、男の子は多くの障害(先天異常の疑いあり)がありました。そのため10回近い手術もして入院期間は長期に及びました。



「卵子の購入費は約500万円以上?」。週刊誌のスクープ記事には、そのように書かれていましたが、この卵子は果たして健全(良質)だったのでしょうか。私は強く疑っています。他人の卵子提供による体外受精の問題点につきましては、P-LAPブログ2013-10-3「卵子凍結・保存がもたらす社会的混乱の可能性」をご覧ください。(コチラ)

“自分の子供を持ちたい”というその執念は、週刊誌などでもしばしば取り上げられていました。ご存知の方も多いでしょう。



この美談(?)は、産婦人科医の立場を離れたら、頭の下がるところが少なくありません。ただ産婦人科医として考えると、大いに疑問があります。

 それは、ご自分と男の子に提供された高度医療を考えるからです。母子を支え続けたスタッフ方々のご苦労はもとより、使われた医療費を想像すると、個人の“エゴ”と言えば、言い過ぎでしょうか。

 

 有力政治家の様に、出産適齢期を過ぎた女性が、次々と「他人の卵子」で体外受精に挑まれ、不幸にも先天異常の赤ちゃんが少なからず生まれてきたとします。

 ケアに奔走する医療スタッフの確保や膨れ上がる医療費の国庫負担をどうされるのでしょうか? 

また海外での代理出産では、障害を持って生まれてきた赤ちゃんの引き取りを拒否するトラブルも多く報告されています。  
 
 自民党が検討している生殖補助医療法案は、このように様々な問題点を内包しているのです。
  

 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 

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