2014年10月

Dr.水谷のお産講座No.40「早産治療薬としてのマグネシウムの効果に疑問」

 

 外国では、早産による低出生体重児の脳機能の低下や発達障害など

の予防にマグネシウム剤がよくつかわれているそうです。このほどオーストラリア、メルボルン大学の研究グループは、その効果を検証するため、妊娠30週に満たない時期に分娩が切迫していた妊婦さんに対して、硫酸マグネシウム剤の投与またはプラセボ(薬剤の入っていない偽薬)を投与し、その後、赤ちゃんが生まれてからそれらの児を6歳から11歳ぐらいになるまで脳機能や身体と精神・行動の発達を追跡調査しました。硫酸マグネシウム群は535例、プラセボ群は527例、追跡した児は約700例にのぼります。その結果、両群に有意な差はないことが判明しました。追跡した669児のうち、脳性麻痺になった児の割合は、マグネシウム群で295例中23例(8%)、プラセボ群では314例中21例(7%)、また、運動機能異常のある児の割合は、マグネシウム群で297例中80例(27%)、プラセボ群では300例中80例(27%)と、両群に差はありませんでした。マグネシウムは早産児の生後の脳性まひにとくに予防効果があると言われていますが、今回の結果はそれを裏付けるエビデンスにはならなかったのです。



参考:米国医師会雑誌 20149月 (the Journal of the American Medical Association. Sept. 17





 


 


 

ソファは赤ちゃんを寝かせるのに最も危険な場所

 
米ミズーリ州カンザスシティの小児マーシー病院のJeffrey Colvin(ジェフリー・コルヴィン)氏らが、ソファで睡眠中に死亡した乳児は、他の場所で死亡した乳児に比べ、窒息による死亡の比率が約2倍と報告しています。

ソファで死亡した乳児の40%が窒息による死亡、36%が死因不明、24%がSIDS(乳幼児突然死症候群)による死亡だった、と報告している論文もあります。(文献)。

SIDSは睡眠中に起こるケースが多いとされています。1990年代に乳児の仰向け寝が推奨されるようになってからは半減しています。ただ米国では年間約4,000人の乳幼児がSIDSで死亡しており、ソファで睡眠中に死亡した乳児の90%は大人と一緒に寝ていたことが明らかになっています。

Colvin氏は「ソファは場所が狭く、乳児が大人の体とクッションの間に挟まれやすいため、乳児が窒息し死亡する可能性が十分考えられる」と指摘しています

この問題は、お産講座No38「乳児のうつぶせ寝とカンガルー・ケアーに共通する危険性」で取り上げた問題と基本的に同じです。SIDSは、以前は推奨されていたうつぶせ寝やカンガルー・ケアーという、いわば間違った保育指導がもたらした病気とも言えるようです。

文献:Rechtman LR, et al. Pediatrics. 2014 Oct 13.

オキシトシンが自閉症治療薬となる可能性


 胎児が作るホルモンのオキシトシンは、P-LAP ブログで度々取り上げてきました。近いところでは、お産講座34でもとりあげました。過去のブログで胎児のオキシトシンは、胎児の健康(健全)な発育の指標になり、またこのホルモンが陣痛を引き起こすホルモンであることをご説明しました。

このホルモンが点鼻薬の自閉症の治療薬として使用され始めているのを皆様ご存じでしょうか?

自閉症はヒトの発達初期から現れる代表的な発達障害です。対人、対社会的なかかわりが出来ず、固執的な反復行動などがその特徴です。自閉症の原因は未だ不明であり、その有効な治療法はありません。

近年、オキシトシンと人の各種精神障害との関連性が明らかになり、オキシトシンが精神障害治療薬としての試みが行われています。

ゴードンらは、オキシトシン点鼻薬を小児自閉症患者に投与して神経活動への効果を調べて、自閉症患者では脳の社会的情報処理をする部分(領域)のオキシトシンが少なく、オキシトシン点鼻薬の投与で脳の社会的情報処理が回復することを見出しました(文献)。

この事は、オキシトシンは自閉症治療に効果が期待され、社会的コミニケーションを改善する薬になることを示しています。

すでに、オキシトシンは東京大学や金沢大学で、小児自閉症の治療薬としての臨床が始められています。近い将来点鼻薬という使いやすい自閉症治療が行われる事を期待されています。
 文献:Gordon I et al. PNAS 110:20953, (2013)








 

 

 

 

 

 

 

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