2014年11月

Dr.水谷のお産講座No.41:妊娠が順調な妊婦は便秘になる。半面、下痢は要注意



昨年の米国産科婦人科学会(ACOG)で、米ロヨラ大シカゴ校ストリッチ医学部産婦人科のスコット・グラジアーノ(Scott Graziano)准教授らが、妊婦4人中約3人が便秘や下痢などの腸管障害を経験するが、生活の質(QOL)に大きな影響はないという研究結果を発表しました。

この報道から、妊婦は一体どのようなことを考えればよいのでしょうか?


妊婦にとって腸管がのんびりして動かない(収縮しない)便秘と腸管が動き過ぎる(収縮する)下痢では全く意味が違ってきます。

もちろん、便秘や下痢も程度次第ですが、妊婦の便秘はむしろ当たり前のことなのです。

ところで、プロゲステロンというホルモンをご存じですか?

このホルモンの名前ですが、プロはまさにプロ野球のプロ、もともと物事を突き進めるという意味です。ゲステロンは妊娠していることを意味します。プロゲステロンは妊娠を維持継続させるホルモンという意味です。


妊娠を維持継続させるには、陣痛が来るときは別ですが、子宮が収縮すると困ります。流産や早産になります。

妊娠すると、プロゲステロンは胎盤で作られ、妊娠が進むとともにその量をどんどん増していきます。そして子宮の筋肉を常に緩める(子宮を弛緩させる)ように働いています。

実は、腸管を収縮させて下痢させる筋肉も、子宮の筋肉も親戚の筋肉、つまり内臓の平滑筋でできています。


妊娠が順調なら、妊婦はプロゲステロンの働きで、便秘傾向になるのです。便秘が悩みの妊婦さんは、自分の妊娠が順調に進んでいると思ってください。

一方、下痢には食中毒とか色々な原因があるため、簡単に説明出来ません。ただ妊婦にはあまり歓迎すべき症状ではありません。

以前は、助産婦さんが、堕胎手術(妊娠中絶)する際の方法として、妊婦に下剤を飲ませる方法があったようです。下剤で腸管が収縮して下痢を起こしますが、同時に子宮も収縮して胎児が出てしまいます。これが堕胎手術です。激しい下痢は、時として流産や早産と関連する場合もあります。


夏は、かき氷やアイスクリームなどの食べ過ぎで腸管が冷える機会が増えます。それに関連して子宮が収縮して流産や早産の原因になることもあります。

現代の妊婦さんは薄着です。これから冬場に向かいますが、下腹が冷えて、下痢はともかく子宮が収縮傾向になることもあります。

格好よりも、まず母体の安全です。薄着は避けてください。




 









 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し高血圧でも薬は飲むな」。馬鹿げた考えが広まる


 日本人間ドック学会が4月に発表した「収縮期の血圧147
mmHgでも健康」という新しい健康基準(正常範囲147/94mmHgをめぐり、大きな波紋が臨床の現場で広がっています。降圧薬を内服中の患者さんたちに余計な心配をかけているのです。

確かに、人間ドックのあり方は問題が多いと思います。商業主義的な健康管理が、健康という「大義」の下に臨床の現場を混乱させ、また、必要のない不安感を受診者に与えています。 

人間ドックは、ある意味、“流れ作業”です。データのみで、正常か異常かを判断しています。

このような健康のとらえ方は、時に大きな間違いにつながります。テレビのCMを視ていて、人間ドックが企業の“ドル箱”になってしまっているのに気がつかれませんか?

ただ、この正反対もいけません。「少し高血圧でも薬は飲むな」と訴えている本が、売れ筋のようです。1月6日のブログ『高層マンション症候群』は、たくさんの方々に読んでいただいています。確かこの考えの提唱者は、人体解剖(医学部の講義で最初の試練です)や患者さんの治療(大変な現場作業です)経験もない方が言い出されたようです。

「少し高血圧でも薬は飲むな」という意見も、同じような臨床未経験者の考えのようです。ヒトの病気・健康に関する問題は、やはり実際に患者さんの治療の現場に携わる医師から出てくる考え方なのです。

それが本来の医学の姿であり、正に医学の進歩・発展の歴史なのです。

昨年7月26日のブログ、“偉い先生方が某製薬会社の降圧薬の宣伝に協力した話”を、今一度読んで頂けますか?



ところで、このブログに登場する降圧剤に、アルツハイマーの予防効果があるのをご存じでしたか?

私は、かなり以前から、全てとは言いませんが、年を取ってアルツハイマー病になる方の多くは、壮年期に血圧がやや高めなのを見過ごした方ではないのか?と考えていました。
私のクリニックでは、上の血圧(収縮期血圧)が130mmHgから140mmHgは要注意と説明して、あの降圧薬と同じ種類の降圧薬の内服を勧めています。

このブログの読者の方は見慣れた名前ですが、アンジオテンシンというホルモンをご存じですか? 昨年7月26日のブログで書いたように、日本人でこの薬の考え方(薬理)を初めて聞いたのは、実は私なのです。ここで書きましたように、学会や論文で発表する前のデータを、アンジオテンシンに興味を持つ研究者約100人のみを集めてアメリカ西海岸の避暑地(ベントーラ)で行った研究会(ゴードンカンファレンス)に私は参加しました。なんと繊維メーカと私は考えていたフランスのデュポン社の研究者(チンマーマン、髭だらけの若い研究者)が、この薬の考え方を発表したのです。
アンジオテンシンが、血圧を上げるのは血管を収縮させるためですが、例の降圧剤はアンジオテンシンが血管にくっ付くところを邪魔してその作用(降圧)を表します。

私は、妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)を勉強する中で、アンジオテンシンの大切さを学びました。

その勉強の過程で、実はアンジオテンシンが血管を収縮させるだけでなく、新しい血管を作る部位を抑制することを知りました。私が大学在籍中、私の医局の多くの医局員がこの仕事で博士号を取りました。

さて、ここで突然、癌の話を書きます。癌が進行・転移するには癌が自分の栄養分を獲得するため、血管を新しく作られねばなりません。

だから例の降圧剤は、アンジオテンシンの働きを抑えて癌の進行も阻止するのです。現在、私は一介の開業医です。世間を騒がせた、例の降圧薬を宣伝している訳ではありません。

ただ、人体解剖の経験もない先生方の話を、マスコミが面白可笑しく取り上げて支援し、皆さんを間違った考えに導きはしないかと案じています。

今年は何といっても、“スタップ細胞騒ぎ”でリケ女の小保方晴子さんが大変注目を集めました。彼女が所属する理化学研究所も、高名な先生方がいます。

しかし残念ながら、声の大きい研究者は人体解剖の経験のない方が多いようです。国民の血税を使った研究が、医学本来の目的であるヒトの健康を目指すものであることを切に願っています。





 


 


 

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