▽アメリカやドイツなど先進国のなかで、日本だけが若い世代の死因のトップが自殺です。政府の「2014年版自殺対策白書」によりますと、日本の自殺者数は2年連続で3万人を切り、減少傾向が続いています。ただ若年層の自殺率は改善しておらず、深刻な状況です。 ▽15−39歳の死因の統計では、日本は7年連続で自殺がトップになりました。特に20代男性では死因全体の5割が自殺でした。政府は自殺回避対策として360億円充てています。 ▽ところが、若い世代で自殺が死因のトップは、アメリカやドイツなど先進7カ国で日本だけなのです。その数は、人口10万人当たり20人に上り、次に多いカナダの12.2人を大きく上回っています。一体これは何故なのでしょうか? ▽現在の早産治療薬、いわゆる「張り止めの薬」は、基本的に喘息治療薬です。胎児が子宮の中で、この「張り止めの薬」によって生後精神的に不安定になる可能性があることを、過去のブログで度々指摘して参りました。 ▽精神的な不安定は、うつ病の原因(背景)です。うつ病の患者さんが、自殺に走り易いのも良く知られた事実です。政府が自殺回避対策として莫大な予算を計上しているのは大変有難いことです。 ▽有難いことなのですが、なぜ20代男性の死因全体の5割が自殺という驚くべき事態になるのでしょう。その原因の絞り込みにも予算を配分すべきではないでしょうか? 以下のブログを是非お読みください。 http://p-lap.doorblog.jp/archives/14319958.html http://p-lap.doorblog.jp/archives/28814169.html http://p-lap.doorblog.jp/archives/33738361.html http://p-lap.doorblog.jp/archives/33615345.html http://p-lap.doorblog.jp/archives/36437887.html http://p-lap.doorblog.jp/archives/40562183.html http://p-lap.doorblog.jp/archives/44056964.html
2015年04月
▽オキシトシンが自閉症の治療薬になる可能性があるというブログを以前書きました。URLはhttp://p-lap.doorblog.jp/archives/41190786.html ▽今回は、オキシトシンの点鼻薬(鼻孔スプレー)を使うと、食べる量が減って、減量の補助に応用できる可能性があると報道されたことを取り上げます。3月26日(木)配信の『HealthDay News』に掲載されています。 ▽最近、オキシトシンは「愛のホルモン」と注目されています。インターネットで検索すると、海外ではオキシトシンの点鼻薬が多数販売され、代理輸入している国内の業者もたくさんいるようです。 ▽このブログでは、オキシトシンやその親戚筋のバゾプレシンについてもたくさんの記事を書いてきました。参考のURLはhttp://p-lap.doorblog.jp/archives/38824559.html ▽さて、本題です。『HealthDay News』によると、男性25人(うち12人は過体重または肥満)を、合成オキシトシンの鼻腔スプレーを投与する群とプラセボ群に無作為に割り付けて、被験者にはどちらを投与されたか分からないようにしました。 ▽その後、被験者にメニューから朝食を注文してもらい、注文の倍量の食事を提供して食べた量を測定しました。後日、プラセボ群とオキシトシン群を入れ替えて、同じ実験をしました。 ▽その結果、オキシトシン群では摂食量が平均122kcal少ないことが分かりました。特に脂肪の摂取量は約9g少なくなりました。これにより摂取カロリーは約80kcal減ったということです。 ▽著明な副作用は認められませんでした。ただオキシトシンは妊娠女性の子宮収縮のほか、まれに吐き気や頭痛、アレルギー性皮膚炎などの副作用をもたらすことがあるとしています。 ▽鼻腔スプレーは米国では未承認です。1日3回食前に使用した場合の費用は1カ月275ドル程度だそうです。 ▽オキシトシンは胎児自身が妊娠初期から作り、その発育に大切な働きをしています。陣痛や早産の原因として胎児のオキシトシンが重要な働きをしています。ところが、オキシトシンは妊娠女性の子宮収縮を強力に収縮させるのです。 ▽ン? 何か変と思われませんか。そうです!胎児のオキシトシンは母体へ流れ出てしまうと、妊娠子宮は収縮します。なので、胎児がオキシトシンを作れば、妊娠は継続できませんよね?胎児の愛のホルモン、オキシトシンによって妊婦さんは全員流産するので、人類は存続できません。しかし現実は違います。なぜでしょう。 ▽人類存続に大切な働きをするのが、このブログの主人公のP-LAPなのです。P-LAPはオキシトシンやバゾプレシンを瞬時に破壊して、その働きをなくしてしまう酵素なのです。参考のURLはhttp://p-lap.doorblog.jp/archives/23980777.html ▽オキシトシンは、ヒトの体では瞬時にP-LAPによって破壊されます。高価なオキシトシンの点鼻薬を買って使っても、すぐ壊れてしまいます。効果があるは極めて短時間なのです。オキシトシンの人体でのクリアランス(働きが半分になる時間)は3-5分です。 ▽このため減量や鬱の治療にオキシトシンの点鼻薬を使う際は、P-LAPの働き(活性)を考慮しないと、何をやっているか、無意味なことになりかねません。P-LAPは、オキシトシンよりバゾプレシンを破壊する力が数倍もあります。 ▽改めてインターネットでバゾプレシン検索していたら、「バゾプレシン研究会」の存在を知りました。URLを書いておきます。 http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&cad=rja&uact=8&ved=0CB8QFjAA&url=http%3A%2F%2Fwww.avp.gr.jp%2F&ei=JmszVZWODsiB8QXO7IDADw&usg=AFQjCNEWTvBei8-EoIfy7rxkLxLrhV4X3g&sig2=UYoDW0eSodOBzoOXYTHU_g ▽オキシトシンの点鼻薬を使用される方も、「バゾプレシン研究会」の研究者の皆さんも、その働き(効果)を考える際はP-LAPを念頭に置いてください。
▽重い心臓病を患う大阪府吹田市の大林夏奈(なな)ちゃんが、米国で心臓移植を受けるため渡米します。しかし夏奈ちゃんのご両親だけでは渡航費を用立てられないため、支援する団体「ななちゃんを救う会」が、母親の出身地・高松市などで発足しました。ご両親と「救う会」のメンバーは4月13日、香川県庁で記者会見し、生後8カ月の夏奈ちゃんの手術や渡米に必要な費用2億8千万円の募金集めの協力を呼び掛けました。
▽夏奈ちゃんは生後3か月の2014年9月、心臓の左心室の筋肉が障害を起こして心不全となる「拡張型心筋症」と診断されて入院しました。「拡張型心筋症」は、10万人に1人が罹患する難病です。病状が悪化した15年1月には大阪大付属病院で小児用人工心臓を装着する手術を受けました。
▽拡張型心筋症は、心臓移植以外に根本的な治療法はありません。国内での移植が難しいため、両親は海外での手術を決意。既に米国のテキサス小児病院から受け入れる内諾を得ているそうです。
▽父親の謙一さん(28)は会見で「夏奈が生きてほしいとの思いで米国での手術を決断した」、母親の奈央さん(28)は「娘は人見知りせず、ニコニコ笑う。元気になって、いろんな人に笑ってほしい」と願いを込めて話していました。
▽夏奈ちゃんばかりではありません。つい最近、愛知県半田市でも「拡張型心筋症」の子供がいて、名古屋市の繁華街の栄地区や金山地区で募金活動をしたという報道に接しました。
▽ところで、この難病で海外での手術をするための募金活動に関する報道が多いように思われませんか?さらに言えば、元気に生まれてきた赤ちゃんの心臓の筋肉が薄くなるような難病が、たびたび起こるのは不思議と思われませんか?
▽早産や妊娠高血圧症で使用されている標準治療薬が、胎児の心臓に大きな負担をかけていたことが、拡張型心筋症につながっていないかと懸念する記事を、このブログで書いています。次のURLにアクセスしてみてください。なんとしても、夏奈ちゃんや子供たちの不幸の原因を突き止めねばなりません。
http://p-lap.doorblog.jp/archives/8738872.html
http://p-lap.doorblog.jp/archives/12350884.html
http://p-lap.doorblog.jp/archives/11361114.html
http://p-lap.doorblog.jp/archives/15554285.html
http://p-lap.doorblog.jp/archives/19012054.html
http://p-lap.doorblog.jp/archives/38769637.html
http://p-lap.doorblog.jp/archives/40098448.html
「ななちゃんを救う会」のURL:http://nanachan.jp/
▽インターネットの検索エンジンに「家庭で出来る遺伝子検査」と打ち込むと、大変な数の情報が健康という言葉とともに現れます。その風潮を煽っているのは、女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、がん予防のため39歳で卵巣を摘出したとニューヨーク・タイムズ紙が報じたことです。 ▽彼女は2年前、乳がんリスクを高める遺伝子変異が認められたことから、予防的に両方の乳房を切除して世界を驚かせました。そのことは昨年6月24日、このブログでも取り上げました。 ▽少し重複しますが、米国FDA(日本の厚労省に相当)は、世界最大手の遺伝子検査会社「23andMe」に警告、商業主義が医療の領域に土足で踏み込む状況にクギを刺しました。 ▽「23andMe」のCEO(最高経営責任者)アン・ウォジツキ氏は、グーグル創業者のセルゲイ・ブリン氏の妻として知られ、2006年の創業から7年間に世界の50万人分の遺伝子検査を手掛けました。 ▽同社は、遺伝子検査サービスで病気の素因の有無、健康のリスクといった情報を通知して膨大な人数の検査で利益を得ています。これに対しFDAは、具体例を交えながら、遺伝子検査の弊害を詳しく説明しています。 ▽一つの例として挙げたのは、BRCAの遺伝子乳がん検査です。アンジェリーナさんのおかげでBRCAの遺伝子検査は世界の耳目を集め、大々的に報道されました。そして遺伝子検査そのものも有名になりました。 ▽この手の検査で儲けようとする「23andMe」と同様の多数の企業は、彼女の快挙?にもろ手を挙げて喜んだのです。日本でも巨利を得ようと、「23andMe」を模倣する有名企業が少なからず現れているようです。 ▽そこに今回は卵巣摘出です。世界中の、この手の企業は笑いが止まらないでしょう。商売繁盛でアンジェリーナさんが神様のようにみえているかも知れません。 ▽日本人の乳がん患者を対象にした調査では、家族歴のある人(第2近親以内に乳がん・卵巣がん発症者がいる人)の26,7%にBRCA1/2遺伝子に変異が確認されました。その結果から推測すると、日本人の乳がん患者の2-4%に遺伝子変異があり、発症の原因になっているのではないかと考えられます。 ▽実は、BRCA1は、最先端のがん治療で知られる「がん研究所」(東京都江東区)の三木義男・遺伝子診断研究部長が、家族性の乳がん原因遺伝子として発見しました。BRCAとは乳がんになりやすい遺伝子という意味です。この遺伝子が変異している(通常と異なっている)と、卵巣がんにもなり易いことが知られています。ただ、あくまでも「なり易い」のであり、「なる」のではありません。 ▽この遺伝子からできるタンパク質は、他の多くの物質と関わって細胞の中で核遺伝子を調節しています。しかし、がんが体内で出来る時の詳しいメカニズムは、本当はよく分かっていません。この遺伝子の問題だけで、乳がんや卵巣がんの発生を説明できるとは思えないのです。 ▽遺伝性のがんはあるものの、がん細胞自体が親から子に遺伝することはありません。また、ほとんどのがんの発症は、遺伝子と直接関係はないと言われています。BRCA1遺伝子の変異で乳がんになった人の割合は、患者全体の5-10%にすぎません。 ▽逆にいうと現段階では、がんの90-95%は特定の遺伝子とは無関係に発症しています。それを一部の医師たちが、危険なBRCA変異の遺伝子を保有する女性には出産を終えた35-40歳で卵巣も摘出するよう勧めているのです。
▽ヒトは妊娠すると、胎児の成長に不可欠な2つの女性ホルモン、エストロゲン(以下、E2)とプロゲステロン(以下、P)が、胎盤で作られて、非妊娠時の約100倍も母体血中に増加します。この2つの女性ホルモンは、出産するまで胎児の成長を促すと同時に、正常な分娩まで母体の妊娠を継続させて、胎児の正常な発育を見守っています。
▽講座No.43で指摘したように、早産や妊娠高血圧症のリスクのある妊婦にE2とPを漸増投与する方法は、分娩時期を延ばし、胎児を正常発育に近づけて早産を防ぎ、妊娠高血圧症を改善しているのです。事実、これまでにE2とPを漸増投与する方法で、私は数十例の早産治療に成功しています。また妊娠高血圧症の重症例では、この治療法で帝王切開分娩して親子二代に渡って、安全性を証明した例もあります。
▽その重症例の妊婦さんから生まれたお嬢さんは、2人の元気なお子さんを生みました。E2とPの漸増投与法で治療した重症妊娠高血圧症の妊婦さんは現在、2人の健康なお孫さんを持つおばあちゃんになっています。
▽この女性ホルモンの重要性に注目したドイツの産科グループは1999年、私の方法とは少し違ったやり方で超低出生体重児(Extremely low birth weight infant、出生体重1000g未満)にE2とPを投与して、新生児の成長効果を調べました。
▽非妊娠時の100倍に増えた母体のE2とPは、分娩後は急速に減って妊娠前のレベルに戻ります。早産で生まれた新生児(低出生体重児)は、正常に子宮内で育つ胎児と比べて、突然E2とPが低レベルの状態に置かれます。
▽ドイツの産科グループは、分娩直後から早々と生まれた13例の早産新生児(平均26週で出産、全員女児で平均体重690g)にE2とPを投与しました。投与期間は20日間の例が最も多く、最長例は6週間でした。この方法で新生児のE2とPのホルモン濃度は高く維持されました。また投与期間に新生児の発育に関する副作用などの悪影響が現れた例は皆無でした。
▽医学誌に投稿した論文で産科グループは「この試みはまだ初期段階。今後13人の新生児が健康で元気に育っていくのを見届けなければ、E2とPの低出生体重児発育への影響は何とも言えない」とコメント。そのうえで「もし、この結果が満足するものになれば、将来、E2とPの低出生体重児への投与は臨床に使われるだろう」としています(文献)。
▽私たちのNPOが提案している妊娠高血圧症と早産を治療するためのE2とPの漸増投与法は、ドイツの産科グループの論文をはるかに先取りしているのです。
文献:Trotter A et al. Pediatric Research (1999)45,489-493