▽米国疾病予防管理センター(CDC)のH.Pamela Pagano氏らが、うつ病や双極性障害の女性たちに対するホルモン避妊法や子宮内避妊器具の安全性を検討し、経口避妊薬の積極的な使用を推奨している。(1)
▽この研究は、うつ病や双極性障害の女性たちのホルモン避妊法についての安全性を調べるのが目的だが、彼女たちには望まない妊娠をするリスクが増えているという背景がある。
▽H.Pamela Pagano氏らは、まず、今年1月までに発表された、うつ病や双極性障害の女性たちに用いられたホルモン避妊法の安全性に関する論文を探索した。併せてホルモン避妊法を用いた際の症状変化、入院、自殺、薬物療法の変更(増量、減量、薬剤変更)も検討した。
▽その結果、次のようなことが分かった。
1)経口避妊薬(ОCs)は、双極性障害女性の月経周期全体にわたって気分を変動させなかった。一方、ОCsを使用しなかった女性は月経周期全体にわたって気分が有意に変動した。
2)ОCsの使用者は、非使用者と比較し、フォローアップ時にうつ病の症状が現れなかった割合は同程度だった。ОCsの使用の有無にかかわらず、薬物療法では抗うつ剤fluoxetine(製品名プロザック)投与群とプラセボ(偽薬)投与群のどちらの治療群でも、うつ病の女性たちのうつ病尺度スコアの増加は認められなかった。
3)ОCsの併用者は、IUD(子宮内避妊器具)の使用者と比較して、11か月間にわたり、うつ病の症状が現れる頻度が少ないことが分かった。著者らは「6件の限られた研究から得られた結果では、ОCs、レボノルゲストレル(黄体ホルモン)放出IUS(製品名ミレーナ)を使用したうつ病または双極性障害の女性は、ホルモン避妊法を用いなかった女性と比較して、臨床症状の経過の悪化との関連はみられなかった」としている。
▽この論文から、産婦人科臨床で日常しばしば遭遇するうつ病や双極性障害の女性に対する経口避妊薬「ピル」の積極的な使用が、患者のQOL(生活の質)向上に役立つことが明らかと言える。
Pagano HP, et al.Contraception. 2016 Jun 27. [Epub ahead of print]