2017年04月

Dr.水谷の女性と妊婦講座No.105「早産治療へのベータ刺激剤投与が若者の自殺者を増やしていないか。国は原因解明を」

 ▽朝日新聞デジタルが4月21日、次の様に報じていました。

警察庁の統計によると、2016年、320人の小中高校生が自殺で亡くなった。小学生12人、中学生93人、高校生215人。3分の2は男子だった。厚生労働省によると、15-19歳では自殺が死因の1位、10-14歳では2位だ。
▽16年の小中高生の自殺の原因(複数もある)を、警察庁の統計でみると、「学業不振」など学校問題が36・3%で最多。「親子関係の不和」など家庭問題23・4%、「うつ病」など健康問題19・7%と多岐にわたる。学校問題のうち、いじめが原因とされたのは全体の1・9%、6件だった。
▽自殺原因は、マスコミで大騒ぎされる学校問題が1.9%なのに対し、「うつ病」は10倍以上の19・7%に上っているのです。この実態を放置していいのでしょうか。マスコミは、どうして伝えないのでしょうか。不思議でなりません。

▽「うつ病」で自殺する若者が多いのは、私は早産治療薬ウテメリンなどベータ刺激剤の副作用と考えています。過去のブログでも何度も指摘しました。米国でもそういう研究報告が既に報告されているからです。

▽米ジョンズ・ホプキンズ大学のフランク・ウィッター教授は、産科治療に汎用されているベータ刺激剤の副作用に関する疫学研究を詳細に調べました。その結果、ベータ刺激剤を妊娠期間に使用することで胎児の脳に悪影響を及ぼしている可能性が明らかなのです。妊娠初期から中期にかけてベータ刺激剤を投与された妊婦から生まれた新生児は、自閉症の症状が多くみられました。さらにベータ刺激剤を投与されていた妊婦の新生児は、認知機能や運動機能の発達が遅れていました。

▽妊婦にベータ刺激剤を投与することによって、胎児の脳に悪影響が現れるという事実に対し、社会はほとんど目を向けていません。妊婦へのベータ刺激剤投与と青少年の自殺の因果関係に、社会はもっと敏感になるべきです。

▽英国の著名な疫学者のデビッド・バーカー博士は、低出生体重児の成長過程における自殺との関連性を調べました。バーカー博士は、その長期間の研究結果を2001年に発表した論文にまとめていますが、低出生体重児は成長後の精神障害やうつになるリスクが高いとしています。しかもリスクは、男性でより高いのです。

▽どうしてでしょう。母体に投与されたベータ刺激剤は、胎盤を通過して胎児にも働きます。その結果、生まれてくる赤ちゃんの自律神経が不安定になり、自閉症や精神障害、認知障害の危険性が高まるのです。とくに自閉症は自殺の原因の70%以上を占めているとされています。この問題が、いかに重要か、分かっていただけるでしょう。

▽海外では、ベータ刺激剤は妊婦に殆ど使用されていません。子供が自閉症になる危険性があるのだから、当然です。しかし日本では、ウテメリンなどのベータ刺激剤が漫然と妊婦に長期投与されています。厚労省の怠慢と言わざるを得ません。日本産科婦人科学会が発表した2017年改定版のガイドライン産科編も、早産治療にベータ刺激剤の使用を勧めています。

▽海外では早産治療にほとんど使用されていないベータ刺激剤が、日本では標準治療薬として広く使われています。国は、若者の自殺原因をまとめて発表するばかりでなく、どうして自閉症が多いのか、うつになるのか、といった根本原因を真剣に解明する時期ではないかと思うのです。

()F.Witter etal.American Journal of Obstetric and Gynecology 2009;261(6):553-9

 ()C.Thompson et al.British Journal of Psychiatrics2001;179:450-455

Dr水谷の女性と妊婦講座No.104「子宮の張り止め薬では早産は止められません」

 

▽早産は正期産(妊娠370日~妊娠416日)以前の出生をいいます。 日本では妊娠220日~妊娠366日の出産を早産と呼んでいます。 世界中の妊娠の5~13%が早産です。 早産は新生児が死亡する主因で新生児死亡の28%に関与しています。 生き延びることができても、早産で生まれた子供は呼吸器トラブルや脳性小児マヒ、知的障害といった健康問題で生涯悩まされがちになります。わずか2~3週の早産であっても、正期産で生まれた子供に比べて、入院したり病気になったりするリスクが高くなります。

▽現在の早産治療薬は、このブログで度々取り上げてきましたベータ2刺激剤です。基本的に喘息治療薬と変わりません。子宮の“張り止め”として広く使われているウテメリンは最初に認可された早産治療薬です。それでは、早産治療薬は早産を防止しているのでしょうか?

 

厚生労働省人口動態統計の低体重出生児の割合を示す1980年から2009年までのグラフがあります(グラフ)。 これを見ると、その割合は年々増加の一途をたどっています。一体、どういうことなのでしょう。一つ目は、ベータ2刺激剤の治療は効果がない。二つ目は、効果はあるものの、人工的な早産が増えている、ということでしょうか。

 

▽一つ目は、さすがに考えにくいと思います。二つ目として考えられるのが妊娠高血圧症です。妊娠高血圧症は高血圧が主症状ですが、切迫早産(子宮収縮)を合併する場合がしばしばあります。この病気は治療薬がないと言っても過言ではありません。非妊娠時に一般的に使用される降圧剤は、ほとんど効果がありません。むろん、血圧が急激に上昇すれば、降圧剤を使用せざるを得ません。しかし降圧効果は一過性で、産婦人科医は妊娠高血圧症の母児への危険を避けて、妊娠週数を無視して帝王切開術で早産させます。産婦人科医は、防御医療ともいえる人工早産で妊娠高血圧症に対処しているのが現状です。

1980年代以前から続く、この人工早産が増加の一途を辿る早産件数の原因の一つでしょう。

 

▽早産を防ぐべく、切迫早産に対して数々の治療が試みられてきました。例えば、ウテメリン塩酸リトドリン)は1985年、産科に使われるようになりました。グラフを見て頂ければ明らかですが、ウテメリンが広く使用されてからも早産はどんどん増えています。次に2000年ごろから硫酸マグネシウムが早産の治療薬として産科で広く使われるようになりました。グラフから分かるように、硫酸マグネシウムが登場してからも、早産は増え続けています。この事実はウテメリンも、硫酸マグネシウムも、二つ目の早産治療に根本的な解決をもたらしていない事を証明しています。

▽2003年ごろから、早産治療に黄体ホルモン(プロゲストロン)が再び使用され始めました(50年以上前は黄体ホルモンが早産治療薬の主流でした)。そのころから、やっと早産の増加に初めて歯止めがかかり、2008年ころから、早産は減少傾向になりました。

▽ウテメリンや硫酸マグネシウムの母児への副作用が、いかに重いかは、このブログでも何度も指摘してきました。ウテメリンや硫酸マグネシウムの母児への副作用の啓発を目的として、私は「NPO法人妊娠中毒症と切迫早産の胎児と母体を守る会」を立ち上げて活動しています。NPOは、もう一つの目標を掲げています。黄体ホルモンの分泌に伴って胎盤から増えてくる胎盤酵素の製剤化です。ブログをお読みの皆様には、是非とも私たちのNPOへのご理解とご支援を切にお願いいたします。

 

臨床婦人科産科vol71no1 2017_1

リトドリン

Dr.水谷の女性と妊婦講座No103「帝王切開の増加は骨盤の大きさとは無関係。外科医と変わらない産婦人科医が増加」

 

▽オーストリアの研究者らの調査によると、骨盤の幅が不十分な狭骨盤のため、帝王切開する件数が、1960年代の1000件中30件から、現在は36件に増えている。この事実から、帝王切開の普及が人類の進化、即ち骨盤の大きさに影響を及ぼしているという。

 

▽この調査結果は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に論文として掲載された。帝王切開の普及前、狭骨盤では産道からの自然分娩が出来なかった。そのため、狭骨盤という身体的特徴の遺伝は阻害されていたと研究者らは推察している。つまり狭骨盤の妊婦は母児ともに死亡して、狭骨盤の女性が淘汰されていると考えたわけだ。

 

▽これは、昨年12月7日の英国BBCニュースで紹介されました。しかし私に言わせるとかなり“大胆すぎる仮説”でしょう。講座Nо.85でも書きましたが、産婦人科医は1500年代から、狭骨盤の女性が胎児を健常に娩出させる方法を考え、母児ともに死なないよう絶え間ない努力を重ねてきたのです。

 

▽オーストリア・ウィーン大学理論生物学部のフィリップ・ミッテレッカー博士は「狭骨盤で帝王切開する頻度が、1960年代と比べて、現在がこれほどまでに増加したのはなぜか?」という疑問から骨盤の進化論に言及。「帝王切開の普及がなければ、難産でこのような問題は進化論的に言えば選択が起きる。現在は帝王切開の普及で出産が可能となり、狭骨盤という遺伝子情報を娘たちに伝えている」と述べています。

 

▽研究者らは、世界保健機関(WHO)などによる分娩様式に関する大規模な調査データをもとに数理モデルを作成し、このような進化の傾向を発見したと述べています。「より小さな赤ちゃんが生まれやすいという進化の選択を促す力は、帝王切開で消え去った」。ミッテレッカー博士は、そう指摘しています。

▽私は、父が産婦人科の開業医だったため、1960年代後半から分娩に慣れ親しみ、産婦人科の臨床医として50年以上働いています。その経験から、この報告に意見を述べます。

▽帝王切開が普及する以前、産科医は臨床医としてのレベル(技量)は、まず、いかに帝王切開しないで、安全に元気な赤ちゃんを誕生させるかでした。父の指導で、私は鉗子分娩を早くから習得しました。

 

▽講座No83-85で述べましたが、そのお陰で鉗子分娩によって難産に対処してきました。胎児の脳に悪影響を与えがちな吸引分娩を避けることが出来ました。経験に照らすと、理論生物学者が過去60年間で狭骨盤で帝王切開が増加した事実を、骨盤の進化論に結びつけるのは軽率かつ短絡的です。PNASがなぜ、このような論文を採用したのか甚だしく疑問です。

 

▽狭骨盤で帝王切開する頻度が、1960年代と比べて増加したのは、一つは、医療訴訟の増加です。二つ目は、産婦人科医の怠慢で鉗子分娩などで狭骨盤妊婦を産道から娩出させる方法を選ばず、安易に帝王切開するためなのです。産婦人科医は自らの特技を忘れ、外科医と何ら変わらないのです。

 

 

 

 



 

 

 

 

 

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