2017年12月

Dr.水谷の女性と妊婦講座 No.118 「生理痛には鎮痛剤。ふざけた〇×製薬のテレビCМ」

生理痛には○×製薬の鎮痛剤」というテレビCMが流れるのを見る度に、女性の健康をないがしろにする、ふざけたCMと一人で憤っています。なぜなら、生理痛がひどい方の多くは、子宮内膜症の可能性が高いからです。

鎮痛剤で生理痛を楽にすることは、単なる対症療法、即ちその場逃れで、子宮内膜症の発見が遅れることにつながり易いのです。子宮内膜症を知らずに放置すると、将来不妊症の原因となるケースも多く深刻な問題です。

最近、PMS(月経前症候群)という言葉が若い女性の間で独り歩きしています。PMSとは、生理の前になると決まって不快な症状が現れ、日常生活にまで支障をきたします。多くの場合、生理が始まると症状が軽くなり、消失するのが特徴です。

▽PMSの多くは、生理が迫る度に激しい生理痛への恐怖と不安に怯え、心身の変調を来すことによる部分が多いと考えられています。

米国の救急医療の調査では、救急車で運ばれる女性の60%近くは子宮内膜症という調査結果があります。通勤途中の駅のホームでうずくまる女性が、救急車で運ばれる光景を目にされる方もいらっしゃるでしょう。実は、その多くは子宮内膜症の痛みである可能性が高いのです。

 

鎮痛剤で痛みを和らげると、その場はしのげます。しかし女性のQOL(生活の質)を妨げる子宮内膜症の発見が遅くなってしまいます。さらに深刻なのは、子宮内膜症が不妊症の原因になりかねないのです。

▽2カ月ほど前、国際産婦人科学会誌が掲載した英国産婦人科学会の研究グループが発表した子宮内膜症に関する論文を読みました。

研究グループは、スコットランド人の女性281937人を調べていました。母集団の内訳は、腹腔鏡検査で子宮内膜症と確定診断された17834人、「異常なし」と判定された83303人、腹腔鏡による避妊手術を受けた162966人、年齢をマッチさせた一般女性17834人です。

▽検討した結果、子宮内膜症の女性は子宮摘出を含む反復手術を受けるリスクが上昇していました。子宮内膜症の62%は、中央値2年未満に2回目の手術を受けていました。その半数が5.5年以内に反復手術を受け、5人に1人は子宮摘出または片側ないし両側の卵巣を摘出していました。

▽研究グループは、子宮内膜症に伴う疼痛症状や不妊症の改善を目的とした外科処置が増えると考えています。そのうえで①子宮内膜症の根本的な治療はなく、治療は常に症状の管理と妊娠希望のバランスを考慮する必要がある②治療を選ぶ際は、術式を検討する前に鎮痛薬やホルモン治療など全ての選択肢のリスクとベネフィットを話し合う③卵巣や子宮の摘除のような根治手術は一度のみとすべき-と指摘し、外科治療の適応を見直す必要性を強調しています。

▽子宮内膜症は稀ではない婦人科疾患です。論文は反復手術によるリスクの実態に警告を発しています。生理痛が痛いからといって、安易に鎮痛剤に頼りすぎる怖さが分かっていただけましたか?

Dr.水谷の女性と妊婦講座 No.117 ウテメリンの副作用は喘息にとどまらない。

前回と前々回のブログで、妊婦の早産治療にベータ2刺激剤の「ウテメリン」を長期間使用すると、お腹の赤ちゃんが5歳になった時、ウテメリンを使われなかった妊婦の子供に比べると、小児喘息になる確率が2倍以上ある、という国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)が発表したプレスリリースをご紹介しました。何度も指摘していますが、「ウテメリン」などベータ刺激剤が妊婦の早産治療に長期かつ大量に使われているのは、世界でも日本だけです。世界ではほとんど使われていないのが実態なのです。

 

 そのベータ2刺激剤による副作用の一端を、日本を代表する高度医療機関の1つ、国立成育医療研究センターが明らかにした影響は小さくないでしょう。現在の産科医療のあり方を変革する端緒になればと願っています。

さて前回のブログでも少し触れましたが、ウテメリンの副作用は小児喘息にとどまりません。ウテメリンを長期投与された妊婦の子供はうつ病になり易いのです。これも世界では周知の事実ですが、なかなか日本では理解が進んでいません。 米国は、妊婦へのベータ刺激剤の使用を厳しく制限しています。その根拠の一つは、ベータ刺激剤の投与とその児のうつ(鬱)病発症の因果関係が高いためと考えられています。米国のベータ刺激剤は、「テルブタリン」と言います。テルブタリンは、ウテメリンよりも動悸などの副作用が少なく、安全性が高いというデータがあります。しかし日本では、なぜかウテメリンが認可され、使用されています。米国では、テルブタリンさえ使用制限されているのにです。おかしいと思いませんか。

▽米国が妊婦へのベータ2刺激剤の使用を厳しく制限した、もう一つの大きな根拠は、私が度々述べてきましたウテメリン使用による母児への心臓毒性の問題と推定されるます。ブログの講座Nо.53で述べた拡張型小児心筋症「大林夏奈ちゃんの心臓移植」を是非お読みください。


▽さらに早産治療へのベータ2刺激剤の使用は、胎児のみならず、母体の分娩後の心筋症の原因の一つとも考えられています。この問題に関しては、ブログ講座
Nо.15(2014年6月1日)の「最近米国で産褥心筋症が増えています」をお読みください。
早産治療でベータ-2刺激剤の使用と拡張型小児心筋症に関しては、
2012年7月12日のブログ「切迫早産薬(ベータ剤)と拡張型心筋症」など多数書いています。

  今回国立成育医療研究センターの発表を機に、米国がベータ2刺激剤「テルブタリン」の妊婦への使用を制限する根拠になったと考えられる論文の一つを読み返しました(文献)。「テルブタリンで早産治療を受けた2卵生双生児で、胎児の脳の発達プログラムが障害され、生まれてきた子供が鬱病になる」というのが論文の趣旨です。早産治療にベータ2刺激剤を使用すると、その児が鬱になる可能性が高まるのは、この論文からも明らかです。

国は、若者の自殺原因をまとめて発表するばかりでなく、どうして自閉症が年々増えているのか、うつ病が多くなっているのか、など妊婦へのウテメリン使用による副作用(薬害?)ともいえる諸問題を真剣に考えるべき時が来ていると思います。


   文献:Connors, S.L.et al. J Child Neurol  2005;20:876-884

 

 

 

 

 

 

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