▽英国産婦人科学会(RCOG)が発行する英国産婦人科学会誌BJOG:(BJОG)の昨年9月27日号に子宮内膜症に関する記事が掲載されました。

▽記事は、子宮内膜症の治療として患者に施される手術が、反復される症例が多いことに警告を発しています。私が、日ごろのクリニックの診療で危惧していたことを、多数の患者を分析して明らかにしています。

▽研究グループは、スコットランド人の女性28万1937人を調査しています。この集団には、腹腔鏡検査で子宮内膜症と確定診断された1万7834人、「異常なし」と判定された8万3303人、腹腔鏡による避妊手術を受けた16万2966人、年齢をマッチさせた一般女性1万7834人が含まれています。

▽検討した結果、子宮内膜症の女性は子宮摘出術を含む反復手術を受けるリスクが上昇しています。子宮内膜症で腹腔鏡手術をした62%が、中央値2年未満内に2回目の手術を受けています。その半数は、5.5年以内にさらに反復手術を受けているのです。

▽反復手術では、5人に1人が子宮摘出または片側あるいは両側の卵巣を摘出していました。反復手術を余儀なくされた要因として、研究グループは子宮内膜症に伴う疼痛症状や不妊症改善を目的とした手術が増えるためと考察しています。研究結果から、研究グループは現時点で子宮内膜症の根本的な治療はなく、治療に際しては常に症状の管理と妊娠希望のバランスを考慮する必要があると指摘しています。

▽私の考えは、研究グループとは少し違います。以前のブログで指摘したように、子宮内膜症は、生理痛には鎮痛剤といった安易な考え方を改めて、適切なホルモン治療を行えば、治癒する疾患なのです。私のクリニックは、開院15年を迎えました。この間、私たちの治療法で多くの子宮内膜症の患者さんを早期発見、またはホルモン療法で継続治療して完治させています。

▽研究グループのコメントが次のように記載されています。「治療を選ぶ際は、術式を検討する前に鎮痛薬やホルモン治療など全ての選択肢のベネフィットとリスクについて話し合う必要がある。その上で卵巣や子宮の摘除のような根治手術は、他の選択肢を検討した上で1度のみとすべきです」。

▽いずれにしろ、研究グループは子宮内膜症への安易な外科治療を見直す必要性を強調しています。私は、大きな意味があると受け止めています。