▽文科省が学校生活で必要な医療的ケアを担う看護師を、今より300人増やし1800人にしたいとして、2019年度の政府予算案に対し、その費用28億円を概算要求しました。重い障害を持った子どもが増え続けている実情が背景にあります。文科省によると、公立の特別支援学校に在籍する医療的ケアが必要な子どもは06年度は5901人でしたが、17年度は約1・4倍に増えました。

 

▽この間、生まれてくる赤ちゃんは06年の109万2000人が毎年減り続け、17年は94万1000人になりました。実に15万人以上減っているのです。にもかかわらず、障害を持って生まれる赤ちゃんは1.4倍になっているのです。おかしいと思われませんか。どうしてだろうか、と考えるのは私一人でしょうか。

 

▽話を文科省の施策に戻します。増やした予算で看護師の数を増やして、子供に付き添う保護者の介助負担を軽くします。公立や私立の学校への看護師の配置費用は、税金で3分の1を補助します。発達障害児の子供たちへの支援が、進学や就労を契機に途切れさせないよう、情報を引き継ぐ仕組みづくりの費用補助や教科書の文字をパソコン上で大きくしたり、音声で聞いたりできる障害児向けの教材作成や普及も後押しします。

 

▽障害が比較的重い子供たちが通う「特別支援学校」の教室が不足して、2016年10月現在で3430教室も足りていません。医療ケアーでも、知的障害児が増え、全体の9割を占めています。障害が軽い子供が通う小中学校の特別支援学級の在籍者も15年は20万1000人になり、この10年間で倍増したそうです。

 

▽障害を持って生まれてくる子供たちへのケアが必要なのは当然です。否定する気持ちは毛頭ありません。ただ、予算を増やして教室や看護師を増やすことが、果たして問題の根本的な対策になるのでしょうか。周産期医療に従事する医師で、この問題を真剣に考えている人がどれだけいるのでしょう。

 

▽文科省は、学校現場を支援するだけでなく、周産期医療に携わる大学の研究者や医師を統括する役目もあります。補助金を増やしても、根本的な解決にはなりません。文科省は、子供が減り続けているのに、障害児はどうして増えるのか。その原因解明に向けた努力を、関係学会と協力して推進すべきではないでしょうか?

 

▽妊娠中に投与される薬剤は、胎児に良かれ悪しかれ影響を及ぼします。国や学会は、赤ちゃん誕生後のデータを集めるばかりでなく、その子がお母さんのお腹の中にいたとき、どんな薬を投与されたのかのデータをとるべきです。医療ケアー児が増え続けている原因を明らかにしないまま、後追いで予算を増やせばよいのでしょうか。これでは、将来に禍根を残すだけで、さらに深刻な社会問題になってしまいます。皆さん、真剣に考えてください。