2019年06月

Dr.水谷の女性と妊婦講座 No.143「ウテメリンはなぜ患者副作用報告にないの?」


厚労省が3月26日、 「本日より、患者の皆様からの医薬品副作用報告の受付を開始します」という報道資料と「患者からの医薬品副作用報告」の実施要項を発表しました。副作用報告は、独立行政法人の医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトへの入力または手紙で受け付けます。PMDAのホームページを読むと、副作用報告の受け付けに至った経緯と、これまでの試行期間中に受け付けた報告数とその内容が掲載されています。

▽“何と親切な…。さすが厚労省”と思い、報告数と報告内容に目を走らせました。試行期間は平成24(2012)326日から平成29年度末(2018年3月31日)までの報告数は計717件。薬効分類ではワクチン類、精神神経用剤、催眠鎮静剤、抗不安剤、解熱鎮痛消炎剤が、副作用では頭痛(127件)、倦怠感(83件)、浮動性めまい(69件)、悪心(60件)が多かったと書かれています。

 

▽この記載を読み直しましたが、ありませんでした。私が、この講座で口酸っぱく警鐘を鳴らしている「ウテメリン」や「マグセント」など、切迫早産や妊娠高血圧症の治療薬の副作用が報告されていないのです。もう一度、この報告制度の経緯から読みました。すると、この制度は薬害肝炎事件の検証と再発防止が狙いで、有識者でつくる「厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会」が患者から直接副作用報告を集める仕組みを作った方がよいと指摘されたのが発端でした。

 

▽テレビのコマーシャルで法人化した弁護士事務所が相談を呼び掛けている「C型肝炎訴訟」について、有識者が検証する中で患者の切実な訴えを聴かなかった反省から生まれたのです。意地悪な言い方をするなら、国は薬の副作用で被害があったと裁判所から指摘されて2000万円や3000万円の損害賠償金を支払わざるを得なくなり、初めて患者の副作用の訴えに耳を貸す仕組みを作ったのです。

 

▽さらに医療費抑制の一環で医師が処方していた医薬用医薬品を処方なしの大衆薬として、薬剤師が常駐するドラッグストアなどでも販売できるようにしたことも、副作用報告制度創設につながっています。こうした大衆薬は「スイッチOТC医薬品」と呼ばれ年々種類が増えていますが、購入者から早めに副作用情報を集め、対策を打ちたいのでしょう。

 

▽それでは「ウテメリン」や「マグセント」に関連する副作用ないのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。妊娠高血圧症や切迫早産といった単語を、グーグルやビーング、ヤフーといったブラウザの検索窓に打ち込むと、数えきれないほどの副作用が報告されています。欧州の28か国でつくるEU(欧州連合)の医薬品審査庁(EMA)は2013年10月、ウテメリンはじめ類似薬の副作用を重くみて参加適応するウテメリン錠は使用禁止、点滴注射剤は48時間の使用制限としました。

 

▽ウテメリンという薬は、実はオランダの製薬会社が開発した喘息治療薬を転用した薬剤の製造技術を、キッセイ薬品工業(長野県松本市)が輸入して国内向けに調整して売り出したのです。いわゆるライセンス生産です。その“本家本元”が使用禁止、あるいは使用制限した薬剤を、厚労省は承認し続けて販売を許しています。副作用は認められるものの、重篤な副作用がみられないというのが理由です。患者から訴えられて敗訴して損害賠償金を支払うまでは、販売禁止や使用制限はしないのでしょうか。

 

▽C型肝炎訴訟に限らず、サリドマイド薬事件、スモン訴訟、アンプル入り風邪薬事件など、薬禍事件は枚挙にいとまがありません。最近は子宮頸がんの予防ワクチン接種をめぐるワクチン禍も指摘されています。どれもが、規制当局の対策が後手に回ってお大騒ぎになっています。世界の先進国でウテメリンの長期使用を容認しているのは日本だけです。その結果、国立医療成育センターも、ウテメリンの長期投与と小児喘息発祥の因果関係を事実上認めざるを得なくなっています。

 

▽直近の講座No.141「ウテメリンやマグセントに代わる安全な治療法」を、改めてお読みいただけないでしょうか。安全な代替薬の存在を明らかにしています。それなのに、このまま危険な薬を許していたら、早晩、訴訟になりかねないと危惧しています。仮に国が敗訴すれば、損害賠償金は私たちの税金から支払われます。それでいいのでしょうか?読者の皆さんのお力添えをお願いします。

 

 

 

 


Dr. 水谷の女性と妊婦講座 No.142「ピルに副作用はありません。女性らしく生きるホルモンです」


 ▽今回の講座は、あらためて女性ホルモンのお話しを致します。講座で何度も取り上げているので、皆さんが十分分かってくださっていると刷り込まれていました。そうではない方も、まだ、まだ、いらっしゃるようです。理解されている方々も、“復習”のつもりでお読みください。

 

健康な妊娠可能な女性は、毎月定期的に卵巣から排卵が起こります。それは通常、月経開始から14日目前後です。卵巣では月経開始からほぼ2週間で、妊娠可能な卵が1個作られます。この卵の成熟と比例して卵胞ホルモン(エストロゲン)が、発育する卵から分泌されて血液中に増えてきます。エストロゲンは女性を美しくし、活力を与えるホルモンです。セックスの原動力にもなります。

 

女性には、もう1つ「プロゲステロン」というホルモンが分泌されています。このホルモンは、排卵した卵の抜け殻(黄体と言います)から分泌されて、血液中に増えてきます。妊娠を維持させる役目のホルモンです。

 

▽プロゲステロン(Progesterone)の「プロ(Pro)」は、例えばプロパガンダと言うように、物事を前に推し進めるという意味があります。「ゲステロン(gesterone)」は、妊娠を意味します。つまり妊娠を推し進めるのです。

 

女性の健康は、この2つの女性ホルモンがバランス良く卵巣から分泌されて、維持されているのです。

 

さて皆さんは、ピル(経口避妊薬)の名前はご存じと思いますが、その中身までご存知ですか?エストロゲンと排卵後のプロゲステロンと同じものが、極微量含まれている錠剤です。

 

▽このピルをめぐって、ネット上では「ピルを飲むと癌や血栓が出来る」などと全く根拠のない健康情報が氾濫しています。全く間違っています。女性を女性らしく、活力を与えている源泉のホルモン(ピル)を飲むのが、どうして危険なのでしょうか。全く科学的な根拠のない、でたらめな健康情報です。

 

▽健康情報は確かに大切です。しかし一方で無責任なエセ情報も少なからず含まれています。最近流行りの“フェイク・ニュース”です。ただ怖いのは、何度も刷り込まれると、ついつい、そうかなぁと信じ込んでしまうこともあります。

 

ピルの副作用情報も氾濫しています。その一因はマスコミにもあります。きわめて特殊な人、例えば何らかの疾患のある人、あるいは極端な肥満、あるいはやせすぎ、引きこもりがちな人などが、たまたまピルを内服中に死亡すると、マスコミは大々的にピルの副作用と関連して取り上げます。

 

▽過去、そのような事例はありました。しかし、実際のところ死亡原因は明確になっていません。ピルによる死亡ではないかも知れません。ピルの製造販売会社(メーカー)は、そのような報道が氾濫しているため、ありとあらゆる副作用の可能性をピルに添付する説明書に書きます。

 

▽その内容はこと細かです。メーカーは、万が一の事態に備えた自己防衛のため網羅的に書いています。その結果、ネットやマスコミなどによって副作用情報が刷り込まれた方は、説明書を読んでピル内服への恐怖心が増幅され、ちょっとした体の不調にも神経質に反応してしまうことがあるのです。

 

▽講座No.132「ピルは卵巣癌のリスクを大幅に減らします」(http://livedoor.blogcms.jp/blog/plap/article/edit?id=54855651)でも述べましたが、デンマークでは女性の86%がビルを内服しています。少し古い情報ですが、世界のピル内服者は1億500万人以上いるのです。

 

▽少しくどくなりますが、女性は女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)のおかげで、女性として生き生きと生涯を過ごせるのです。その同じホルモンをピルとして内服して、どうして副作用が現れるのでしょう。おかしいと思いませんか? 誤った情報に惑わされないでください。

 


Dr.水谷の女性と妊婦講座No.141「ウテメリンやマグセント代わる安全な治療法があります」

▽インターネットで切迫早産、妊娠高血圧症の治療を検索していくと、「ウテメリンの副作用」や「ウテメリンの胎児への影響」といったタイトルの妊婦さんの投稿ブログが並んでいます。


▽そのたくさんの投稿から、ウテメリンやマグセントなどの治療薬の副作用に苦しむ妊娠高血圧症や切迫早産の妊婦さんたちの悲鳴が聞こえてきそうです。


▽読み進むと、ほとんどの妊婦さんは
「ウテメリンやマグセントの他に治療薬がないのだから…」と諦めの言葉で投稿を結んでいます。そんな妊婦さんたちに「ウテメリン」や「マグセント」を使わなくても済む代替治療法を発信するため、NPО法人「妊娠中毒症と切迫早産の胎児と母体を守る会(-LAPの会)」を設立し、診療の合間に講座(ブログ)を更新し続けています。

 

▽それでも私たちが微力なため、この治療方法は残念ながら普及しておりません。幾度も紹介していますが、胎児と母体に優しいホルモン治療法が、その代替治療です。既に臨床で使用されている女性ホルモンを使った治療法なので、安全性に問題はないのです。

▽どんな症状の妊婦さんに対し、どのような用量で、どの程度の期間投与すればいいのか、分かっています。それでもなかなか普及が進まないのは一体どうしてなのでしょうか?

 

▽その壁を打ち破るべく、切迫早産や妊娠高血圧症の夢の治療薬の開発を進めています。その端緒になる研究成果を、きたる8月2-3日に岐阜市の岐阜大学サテライトキャンパスで開かれる第24回日本病態プロテアーゼ学会学術集会in岐阜で発表できる段取りになりました。ぜひ、注目していただきたいと思います。

 

▽同学会は、私が名古屋大学助教授時代、プロテアーゼ(タンパク質のペプチド結合を分解する酵素)の研究を通じ基礎医学と臨床医学を結ぶ架け橋として設立致しました。米国テキサス大学M..アンダーソンがんセンター助教授や東京大学応用微生物研究所助教授などを歴任された中島元夫先生をはじめ、東京大学基礎医学分野の先生方のお力添えを得ました。

 

▽妊娠高血圧症や切迫早産の診断と治療の勉強を進めるうちに、産科の臨床現場だけにとどまっていては、妊娠高血圧症や切迫早産を根治する方法に辿り着けないと考えたためです。ならば、医者や大学病院という垣根を超えて、プロテアーゼをキーワードに様々な研究の叡智を集めれば、可能になると判断しました。

 

▽学会は、糖尿病治療薬であるプロテアーゼ阻害剤、オートファジー、筋肉分解酵素カルパイン、抗エイズプロテアーゼ阻害剤、関節軟骨の破壊に関与する分解酵素といった最先端の研究に取り組む専門家が集まっています。職業も、全国の大学や企業の研究者、基礎臨床の医者など多彩です。


▽私が開発したホルモン治療法(エストロゲンとプロゲステロンの漸増療法)は、胎盤が分泌する女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)を妊娠の週数毎に順次増量投与する方法です。


▽少し難しいですが、妊娠中のホルモンと酵素の働きを説明します。胎児は自らオキシトシンやアンジオテンシンといった微量で働くホルモン(ペプチドホルモンといいます)を作り、自らの発育と成長を促しています。

 

▽ところが、オキシトシンやアンジオテンシンが母体側に流れ出ると、オキシトシンは子宮を収縮させ、アンジオテンシンは母体の血管を収縮させ血圧を上げてしまいます。

 

▽つまり胎盤でオキシトシン(1)やアンジオテンシン(注2)の分解(破壊)酵素が作られ、微量で働くペプチドホルモンホルモンが母体に及ばないようにコントロールされ妊娠が正常に進みます。

 

▽エストロゲンとプロゲステロンは、ペプチドホルモンとは異なるステロイドホルモンです。妊娠時は胎盤で酵素と同様、ステロイドホルモンが作られ、妊娠の進行とともにその量は増えていきます。私は、そのステロイドホルモンが酵素を誘導して増やしている事実を突き止めました。


▽ステロイドホルモンが順調に分泌され、妊娠の週数とともに増えていけば、酵素が誘導され、胎児が自身の発育とともに増やしていくペプチドホルモンの母体側での子宮収縮や血圧上昇の働きが抑えられて妊娠は順調に進行します。


ホルモン治療法は、エストロゲンとプロゲステロン製剤を漸増投与しながら酵素を増やし、ペプチドホルモンが母体の子宮収縮や血圧上昇の働きを抑制する治療法です。


▽女性ホルモンが順調に分泌されていないと、酵素が不足してペプチドホルモンが母体の子宮収縮や血圧上昇を促し病態が悪化します。これが、妊娠高血圧症や切迫早産の正体なのです。


▽ホルモン治療法は、女性ホルモン製剤を投与して2つの酵素をできるだけ長く誘導させ続けます。
私の経験では、ホルモン治療法のみで切迫早産は治療でき、ウテメリンやマグセントは不要です。ところが、重症妊娠高血圧症は、恐らく胎盤組織そのものが損傷を受けているためか、ホルモン治療法のみでは妊娠の延長は最大3週間です。


▽極めて安全な治療法ですが、重症妊娠高血圧症では妊娠の維持に3週間という限界があります。この限界の判断は、NSTなどの監視装置では出来ません。妊婦血中の酵素の測定が必須です。


▽講座Nо.22でも述べましたが、
2011年版の産婦人科診療ガイドライン「胎児発育不全(FRG)のスクリーニング」は、生化学的な胎児や胎盤のwell-being((胎児の状態の健全性)検査方法を一切除外してしまいました。

 

このことは、若い医師たちのためにならないばかりか、医師の診察を受ける患者の皆さんの不利益になっているのです。


▽私は、この限界を打ち破るには、酵素そのものを作る以外にないと考えました。何社かの製薬会社に開発をお願いしましたが、断られました。切迫早産や妊娠高血圧症の妊婦さんは数が少なく、治療薬を製造しても儲けは少ないのです。しかも赤ちゃんの数は年々減り続けています。といって、名古屋大学を退官した後、さらなる研究を重ねて自力で薬剤を開発する資金力はありませんでした。


▽そんな八方塞がり状態に陥っていた私を、プロテアーゼ学会の仲間たちが助けてくれました。その仲間たちの一人の研究者が、夢の薬剤の橋頭保を築きました。それを学会で初めて公開するのです。


▽「
アンメットメディカルニーズ」という薬学用語があります。未だ有効な治療法がない疾患に対する医療ニーズのことです。妊娠高血圧症や切迫早産の治療薬が、まさにそれなのです。

「ウテメリン」は喘息治療薬の転用剤です。治療薬としては問題があり、しかも自閉症など、投薬された妊婦さんから生まれた赤ちゃんに様々な後遺症が現れています。「マグセント」はさらに危険な薬剤です。


▽そういう治療はいけないということは、良心のある産婦人科医なら、誰もが知っている事実です。しかしホルモン治療法を進化させた酵素剤は、そんな心配は一切ありません、安全、安心で赤ちゃんと妊婦さんに優しい薬です。


▽残念ながら
一気呵成に市場に出回らせることはできませんが、いよいよ第一歩が始まります。この私の講座(ブログ)を読んでくださる皆さん方の後押し、国や日本産婦人科学会に声を届けてもらう必要性がこれまで以上に増しています。どうかよろしくお願いたします。

 

(注1)母体血中のオキシトシン分解酵素(P-LAP)

(注2)母体血中のアンジオテンシン分解酵素(APA)


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