▽厚労省が3月26日、 「本日より、患者の皆様からの医薬品副作用報告の受付を開始します」という報道資料と「患者からの医薬品副作用報告」の実施要項を発表しました。副作用報告は、独立行政法人の医薬品医療機器総合機構(PMDA)のウェブサイトへの入力または手紙で受け付けます。PMDAのホームページを読むと、副作用報告の受け付けに至った経緯と、これまでの試行期間中に受け付けた報告数とその内容が掲載されています。
▽“何と親切な…。さすが厚労省”と思い、報告数と報告内容に目を走らせました。試行期間は平成24(2012)年3月26日から平成29年度末(2018年3月31日)までの報告数は計717件。薬効分類ではワクチン類、精神神経用剤、催眠鎮静剤、抗不安剤、解熱鎮痛消炎剤が、副作用では頭痛(127件)、倦怠感(83件)、浮動性めまい(69件)、悪心(60件)が多かったと書かれています。
▽この記載を読み直しましたが、ありませんでした。私が、この講座で口酸っぱく警鐘を鳴らしている「ウテメリン」や「マグセント」など、切迫早産や妊娠高血圧症の治療薬の副作用が報告されていないのです。もう一度、この報告制度の経緯から読みました。すると、この制度は薬害肝炎事件の検証と再発防止が狙いで、有識者でつくる「厚生科学審議会医薬品等制度改正検討部会」が患者から直接副作用報告を集める仕組みを作った方がよいと指摘されたのが発端でした。
▽テレビのコマーシャルで法人化した弁護士事務所が相談を呼び掛けている「C型肝炎訴訟」について、有識者が検証する中で患者の切実な訴えを聴かなかった反省から生まれたのです。意地悪な言い方をするなら、国は薬の副作用で被害があったと裁判所から指摘されて2000万円や3000万円の損害賠償金を支払わざるを得なくなり、初めて患者の副作用の訴えに耳を貸す仕組みを作ったのです。
▽さらに医療費抑制の一環で医師が処方していた医薬用医薬品を処方なしの大衆薬として、薬剤師が常駐するドラッグストアなどでも販売できるようにしたことも、副作用報告制度創設につながっています。こうした大衆薬は「スイッチOТC医薬品」と呼ばれ年々種類が増えていますが、購入者から早めに副作用情報を集め、対策を打ちたいのでしょう。
▽それでは「ウテメリン」や「マグセント」に関連する副作用ないのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。妊娠高血圧症や切迫早産といった単語を、グーグルやビーング、ヤフーといったブラウザの検索窓に打ち込むと、数えきれないほどの副作用が報告されています。欧州の28か国でつくるEU(欧州連合)の医薬品審査庁(EMA)は2013年10月、ウテメリンはじめ類似薬の副作用を重くみて参加適応するウテメリン錠は使用禁止、点滴注射剤は48時間の使用制限としました。
▽ウテメリンという薬は、実はオランダの製薬会社が開発した喘息治療薬を転用した薬剤の製造技術を、キッセイ薬品工業(長野県松本市)が輸入して国内向けに調整して売り出したのです。いわゆるライセンス生産です。その“本家本元”が使用禁止、あるいは使用制限した薬剤を、厚労省は承認し続けて販売を許しています。副作用は認められるものの、重篤な副作用がみられないというのが理由です。患者から訴えられて敗訴して損害賠償金を支払うまでは、販売禁止や使用制限はしないのでしょうか。
▽C型肝炎訴訟に限らず、サリドマイド薬事件、スモン訴訟、アンプル入り風邪薬事件など、薬禍事件は枚挙にいとまがありません。最近は子宮頸がんの予防ワクチン接種をめぐるワクチン禍も指摘されています。どれもが、規制当局の対策が後手に回ってお大騒ぎになっています。世界の先進国でウテメリンの長期使用を容認しているのは日本だけです。その結果、国立医療成育センターも、ウテメリンの長期投与と小児喘息発祥の因果関係を事実上認めざるを得なくなっています。
▽直近の講座No.141「ウテメリンやマグセントに代わる安全な治療法」を、改めてお読みいただけないでしょうか。安全な代替薬の存在を明らかにしています。それなのに、このまま危険な薬を許していたら、早晩、訴訟になりかねないと危惧しています。仮に国が敗訴すれば、損害賠償金は私たちの税金から支払われます。それでいいのでしょうか?読者の皆さんのお力添えをお願いします。