その年、1970年の冬、スミス博士の治療法:前回のブログ:ホルモン療法との出会い(2)を重症妊娠中毒症患者さんに試す機会が訪れました。

ところが、この治療法を試すまでには、思わぬ障害が待っていました。当時、日本の周産期医療ではエストロゲンとプロゲステロンを妊婦に使うのは一般的ではありませんでした。エストロゲンは現在も禁忌とされています。

そこで、妊婦の同意を取り付けて、父が経営していた産婦人科医院の患者として治療することにしました。

スミス博士の論文を参考にしながら、国内初のホルモン療法(天然型のエストロゲンとプロゲステロン併用療法)を試みました。スミス博士は二つのホルモンを治療中は一定量で継続的に使用していました。しかし、私は、前回のブログで述べましたように、妊婦の血液中の二つのホルモンは妊娠週数の進行とともに、暫増するので、我々のNPOホームページに記載していますように、妊娠中毒症と切迫早産のホルモン投与量を妊娠週数で暫増させる投与法で行いました。不妊治療のなかでも体外受精を行うときは、産婦人科医のみならず、患者さんも、如何に二つのホルモンの血液中のレベルが治療の成功に重要かは理解できることです。言うまでもなく、妊娠の成立にエストロゲンとプロゲステロンの血液中の濃度は重要なのです。正常な妊娠の進行とその結果としての分娩にもエストロゲンとプロゲステロンの血液中の濃度は大変重要であるのは同様です。