先般横浜市で996人の子供を対象に調査したところ、10階以上の子供は体重が重く、1.5倍以上分娩異常分娩になる。また2300人の調査データでは、流産率は10階以上で低階層の倍であり、5年以上高層階にすむと、流産は3倍以上になる。また高層階の妊婦は5人に2人は流産する。さらに33歳以上の流産経験者は低階層が22.4%だが、10階以上になると66.7%と跳ね上がるという大変興味深い調査結果が報告されました。その後、この調査成績を基にした本などが出て、いま高層階マンション症候群という多くの妊婦には身近な問題が、クローズアップされています。

しかし、私は検討数も大変少ない調査から、これは全く妊娠の生理を理解しない方々が多くの高層階マンションに住む妊婦さんに無用の恐怖感を与える馬鹿げた考えとおもいます。

むしろ、エレベーターのない低層階のマンションに住む妊婦さんのほうが流産の危険が多いからです。それは階段の使用が、実は胎児にストレスを与え、ひいては流産に結びつくからなのです。

私は、長い産科臨床の中で、分娩予定日を過ぎて陣痛の起こらない患者さんに大変効果のある陣痛誘発法を勧めます。その方法とは:

1)まず自宅で長風呂する事と2)病院の階段(5-6階)の上り降りを勧めます。

1)長風呂は、温まることで妊婦さんの全身の血流、特に体表面の血流が盛んになります。その結果、比較的胎児への血流が減少します。即ち胎児への酸素供給が少なくなり、胎児はストレス状態になります。2)病院の階段(5-6階)の上り降りも実は長風呂と同じ事で、妊娠末期のお腹の大きな妊婦さんが階段の上り降りするのは実に大変です。足の筋肉を中心に血流が盛んとなり、その結果、比較的胎児への血流が減少します。即ち胎児への酸素供給が少なくなり、胎児はストレス状態になります。ともに共通するのは胎児への血流減少で酸素不足がおこり、陣痛が起こるのです。

この私の陣痛誘発法は産科臨床50年の経験のなかで、大変効果的な陣痛誘発法でした。この事実を考えれば、高層階マンション症候群などという馬鹿げた考えの広まりを大変心配いたしております。

高層階マンションにお住いの妊婦さんは、長風呂に注意して、エレベーターを利用されれば、なにもご心配はいりません、素晴らしい景色を楽しみ、分娩に備えてください。



最近の妊婦向けの啓蒙書のほとんどは、実は全く妊娠の生理を理解しない方々が書いておられる書物なのです。その内容は、むしろ妊婦さんに流産の危険の多い生活様式を勧めているものが多いので大変心配しています。妊婦さん向けの豪華ツアーを勧誘する旅行社があるようですが、妊婦さんには、無用の旅行など勧めるのは論外と考えています。