超音波パルス
Doppler法による臍帯動脈血流測定は、胎児well-being の評価法の一つです。胎児・臍帯の血流計測を超音波で観察します。

超音波を胎児・臍帯に当てて流れる赤血球から反射してくる波形の変化から、胎児と胎盤の血液の流れを診るのです。

胎児の低酸素状態が持続すると、胎児と胎盤の間の血液の流れは次第に滞って、心不全の状態となります。

その結果、胎児の心臓からの心拍出量が減って、胎児・胎盤を流れる血液の流れは悪くなります。ごく簡単な言い方ですが、超音波パルスDoppler法による臍帯動脈血流測定の検査法は、このような変化を診察しているのです。

過去に書いたブログを読んでいただくと、胎児と胎盤の間の血液の流れには、胎児が作るバゾプレシンやアンジオテンシンが最重要な調節因子であり、オキシトシンやバゾプレシンは子宮収縮の最重要な調節因子であると指摘してきました。

また、これらのホルモンが母体の血液中へ流れこまないように胎児と母体間の関門(関所)として働く酵素のお話をしました。

実は、胎盤に存在し、これらのホルモンの胎児と母体間の関門として働く酵素は、妊婦の妊娠が進むとともに血液中で増えていきます。

それは、これらのホルモンが、仮に母体へ流れ込んできても、母体側でホルモンが働いて血圧を上げたり、尿を減らしたり、子宮が収縮しないように防御するためとみられます。お産講座No20でも述べたように、1970年以来、私は胎児と母体の関門として働く酵素の妊婦の血液中の濃度を指標に着目して、胎盤機能低下などによる胎児well-beingを評価してきました。

これら胎盤酵素の値(濃度)と超音波パルスDoppler法による臍帯動脈血流の測定値は、良く相関をしていることも論文で発表してきました。

言い換えると、妊婦の血液中のP-LAPなどの胎盤酵素の活性値の測定は、超音波パルスDoppler法に変わり得る検査法になるのです(文献)。


ところが、2011年版の産婦人科診療ガイドライン「胎児発育不全(FGR)のスクリーニング」は、先人達のホルモンや酵素の研究の歴史をほとんど無視しています。これまで述べてきたような、生化学的な胎児や胎盤のwell-being (胎児の状態が健全である)検査方法を一切除外してしまっているのです。

産婦人科学会のガイドラインは、若い医師たちを指導する際の規範にもなっています。それが、これまで話してきたように大切な部分が欠落しています。そのことは、若い医師たちのためにならないばかりか、その医師たちが診察するであろう患者の皆さんの不利益になっていくのです。

文献 Mizutani S et al. Physiological and pathophysiological roles of placental aminopeptidase in maternal sera: possible relation to preeclampsia and preterm delivery. Expert Opin Med Diagn. 2009 Sep;3(5):479-91. doi: 10.1517/17530050903074556. Epub 2009 Jul 29. PMID:23495979