969年、米国シアトルで第2回目の乳幼児突然死に関する国際学会が開催され、SIDS(乳幼児突然死症候群)という診断名が確立しました。SIDS(エス・アイ・ディ・エス)とは、Ssudden、突然)、Iinfant、小児)、Ddeath、死)、Ssyndrome、症候群)の略語です。
日本でも毎年約500700人の乳児がSIDSで死亡しているとされています。1994年、厚生省研究班は、SIDSと診断する際の定義をまとめました。

『それまでの健康状態及び既往歴から、その死亡が予想できず、しかも死亡状況および剖検(解剖)によっても、その原因が不詳である乳幼児に突然の死をもたらした症候群』。少し長いのですが、こう規定しました。

ところが、原因不明とされるSIDSの診断の中には、事故による不慮の窒息死などが含まれています。そして、そのほとんどが、同じような場所で、同じような形態・条件で起こっています。

うつ伏せ寝がもてはやされ、流行した時代がありました。しかし今では、乳児をうつ伏せに寝させるときに、注意を怠れば危険を伴う寝かせ方であることは常識になっています。

うつぶせ寝と突然死発症のメカニズムは明らかではありません。ただ欧米では仰向け寝を推奨するキャンペーンでSIDSの発生率が減ったという報告があり、何らかの関連があるのは疑う余地がありません。

次にカンガルーケアの問題です。カンガルーケアは、1970年代、南米コロンビアの首都ボゴタの病院から広まりました。

この病院では保育器が不足している上に早産や低出生体重児も多く、困窮していました。ところが、母親がカンガルーのように乳児を四六時中抱き続けるようにしたところ、感染症による院内死亡が激減しました。

母親の心にも変化が起こり、育児拒否が減りました。

この後者の部分が、先進国からたちまち注目されました。カンガルーケアは急速に世界中のNICU(新生児集中治療室)に広がり、やがて通常分娩の赤ちゃんにも普及していきました。

一部の専門家たちは、子育ても視野に入れた周産期医療の象徴のように、カンガルーケアを歓迎しました。


それが今、カンガルーケアをめぐっては医療訴訟も起き、中止する施設が少なくありません。


カンガルーケアの最中に急変し、重症化する赤ちゃんがいることが報道されるようになったからです。


 知人の新生児科医師は「親子の絆作りはとても大切だが、カンガルーケアは出産直後の赤ちゃんの呼吸の不安定さも考えて万全の注意を払わないといけない」と話していました。出産直後の赤ちゃんへの安易なカンガルーケアに警告を発しています。

分娩台は通常平な状態です。分娩後の妊婦さん(褥婦)が、平らな分娩台に仰臥位で寝て、自分のお腹の上に、生まれたばかりの呼吸のリズムも不確かな赤ちゃんをカンガルーのように抱きかかえると、赤ちゃんは呼吸が出来なくなる危険性があります。赤ちゃんの口や鼻を、褥婦が知らず知らずの内に圧迫してしまうからです。


 国民生活センターの危害情報システムには、抱っこベルト、 抱っこひも (子守帯)使用時の赤ちゃんの危害・危険情報が寄せられており、過去10年間で64件に達しています。

抱っこひもは、子どもを連れての移動や買い物、家事をするときに大変便利です。しかし、ちょっとした不注意で事故を招きます。最も危険性が高いのが、赤ちゃんの落下です。月齢に合っていない抱っこひもを使う、ベルトや紐の長さが合っていない、留め具やバックルをしっかり固定していない、そんな時に起こります。

赤ちゃんがぐずったり、じっとしていられないときに、お母さんが無理に抱っこやおんぶをしようとすると、体勢が不安定になり落下する危険があります。

抱っこひもとカンガルーケアが普及した背景には、子育ても視野に入れた周産期医療の変化が影響している、と私は考えています。

 “ねんねん子守よ”という古くからの歌がありますが、赤ちゃんは背中におんぶするのが安全な子守法なのです。新生児保育の基本は、赤ちゃんが楽に呼吸できる仰向け寝が基本です。 子供をがけから突き落として、這い上がってくる子供だけを育てるライオンと人は違います。