昨年の米国産科婦人科学会(ACOG)で、米ロヨラ大シカゴ校ストリッチ医学部産婦人科のスコット・グラジアーノ(Scott Graziano)准教授らが、妊婦4人中約3人が便秘や下痢などの腸管障害を経験するが、生活の質(QOL)に大きな影響はないという研究結果を発表しました。

この報道から、妊婦は一体どのようなことを考えればよいのでしょうか?


妊婦にとって腸管がのんびりして動かない(収縮しない)便秘と腸管が動き過ぎる(収縮する)下痢では全く意味が違ってきます。

もちろん、便秘や下痢も程度次第ですが、妊婦の便秘はむしろ当たり前のことなのです。

ところで、プロゲステロンというホルモンをご存じですか?

このホルモンの名前ですが、プロはまさにプロ野球のプロ、もともと物事を突き進めるという意味です。ゲステロンは妊娠していることを意味します。プロゲステロンは妊娠を維持継続させるホルモンという意味です。


妊娠を維持継続させるには、陣痛が来るときは別ですが、子宮が収縮すると困ります。流産や早産になります。

妊娠すると、プロゲステロンは胎盤で作られ、妊娠が進むとともにその量をどんどん増していきます。そして子宮の筋肉を常に緩める(子宮を弛緩させる)ように働いています。

実は、腸管を収縮させて下痢させる筋肉も、子宮の筋肉も親戚の筋肉、つまり内臓の平滑筋でできています。


妊娠が順調なら、妊婦はプロゲステロンの働きで、便秘傾向になるのです。便秘が悩みの妊婦さんは、自分の妊娠が順調に進んでいると思ってください。

一方、下痢には食中毒とか色々な原因があるため、簡単に説明出来ません。ただ妊婦にはあまり歓迎すべき症状ではありません。

以前は、助産婦さんが、堕胎手術(妊娠中絶)する際の方法として、妊婦に下剤を飲ませる方法があったようです。下剤で腸管が収縮して下痢を起こしますが、同時に子宮も収縮して胎児が出てしまいます。これが堕胎手術です。激しい下痢は、時として流産や早産と関連する場合もあります。


夏は、かき氷やアイスクリームなどの食べ過ぎで腸管が冷える機会が増えます。それに関連して子宮が収縮して流産や早産の原因になることもあります。

現代の妊婦さんは薄着です。これから冬場に向かいますが、下腹が冷えて、下痢はともかく子宮が収縮傾向になることもあります。

格好よりも、まず母体の安全です。薄着は避けてください。