▽前回No97のブログで紹介した妊婦さんを治療したのと同時期、切迫早産の妊婦さんを、プリカニールを併用せずに、ホルモン療法のみで治療する事ができました。名名古屋大病院の産科主任時代でした。

▽妊婦さんは、小児期に心筋内膜欠損症のため修復手術を受けています。妊娠21週に規則的な子宮収縮を訴え、切迫早産のため名古屋大病院に入院しました。

▽ここで心筋内膜欠損症を少し説明します。生まれつき心臓(心房と心室)の4つの部屋の壁が極端に薄い、あるいは、欠損しています。心房と心室間の弁も十分に発育していません。当然、当時ウテメリンの代わりに使用されていた喘息治療薬のテルブタリン(ブリカニール硫酸塩)は、心臓に負担をかけますから、使えません。

▽迷うことなく、ホルモン療法を選択しました。妊娠21週の入院と同時にホルモン療法を始めて、妊娠29週まで続けました。

●は、妊婦さんのP-LAP値の推移。○はズファラジン100mg/日持続点滴で治療した切迫早産の妊婦さんのP-LAP値の推移(講座No95参考)と対比しています。

▽入院(admission)時のホルモン療法開始前のP-LAP値はかなり低値ですが、図で分かるようにホルモン療法を開始するとP-LAP値はぐんと上昇傾向となりました。その後もP-LAP値は妊娠の進行とともに上がり続けました。

同時に分娩監視装置で子宮収縮を観察しています。切迫早産(子宮収縮)の症状は次第に軽くなりました。切迫早産は軽快し妊娠28週には、ホルモン療法が中止出来ました。その後、入院(安静療法のみ)を継続し、妊娠31週で退院しました。P-LAP値は外来で分娩直前まで継続して測定しました。

P-LAP値は、明らかに○印のズファラジン100mg/日持続点滴で治療した切迫早産の妊婦さんのP-LAP値の推移より高値で推移しました。

妊娠38週に自然陣痛で3090g(アプガースコア9点)の男児を正常分娩しました。Figure8(下図)に示しておきます。

 

 

 

 

 

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ところで私の依頼で静岡済生会病院勤務時代に日本ケミファ―社がP-LAP測定キットを製造してくれました。販売は私が浜松医大勤務時代からで、その後エスアールエル社では臨床検査項目としてP-LAPをカタログに掲載していました。三共のCAPと同じく生化学検査として健康保険認可されていました。