▽新生児医療のお蔭で妊娠期間、つまり胎児がお母さんの子宮で育つ期間(在胎期間)、が短くても"人工子宮"(人工保育器)に移すと生存出来るようになりました。産科の病気で、胎児の在胎期間を短くさせる疾患は、妊娠高血圧症と切迫早産です。以前、お母さんと赤ちゃんに関連する主な診療科は、産科、婦人科、小児科でした。それが最近は、新生児科という新たな診療科を目にするケースが増えました。

▽新生児医療の最前線には、周産期母子医療センターのNICU(新生児集中治療室)が存在します。しかし現在はどこもほぼ満床です。ハイリスク新生児が増えて、その分、対応が難しくなる状態が続いています。

医療機器や医療的ケアが必要でも、ハイリスク新生児は容態が安定期に入ると、できるだけ早期退院を求められるようになっています。さまざまな事情を検討して、重症心身障害児施設で受け入れるケースはあります。ただ子どもたちの多くは、地域の病院を経た後、または、直接在宅での生活を始めることを余儀なくされています。

▽ここに大きな問題が横たわっています。子供たちは、それまでNICUスタッフの高度な医療と手厚い看護によって命を支えられてきています。在宅生活を始めたからといって、家族だけで面倒をみるのは容易なことではありません。病院は生活の場ではありませんから、在宅で家族とともに暮らすのは望ましいことではあります。

▽しかし家族をサポートする医療、福祉、教育の支援態勢は十分整っているとは言えません。勢い家族は、子供と暮らし始めることによって、さまざまな課題と格闘する日々が始まるのです。何とも皮肉な話です。

▽それでは、どうして新生児科が誕生し、引く手あまたになっているのでしょうか。皆さん、そのことを考えられたことが、ございますか?

切迫早産と妊娠高血圧症の治療法の問題点を、これまでのブログで度々述べてきました。今の切迫早産の標準治療薬「ウテメリン」の発売は1986年4月です。その遥か前から、2つの疾患に対する安心、安全な治療法はなかったし、今もないのです。

▽何度も述べていますように、切迫早産には基本的には喘息治療薬と同じベータ2刺激剤、あるいは、下剤のマグネシウム、妊娠高血圧症には、マグネシウム、または、胎児の生きる努力を妨げる一般的な降圧剤(母体の血圧を少しは下げますが、胎盤の血圧も下げますから、胎児は母体からの酸素供給が妨げられ亡くなってしまう可能性があります)があるだけなのです。これらの薬剤は、胎児への副作用のみならず母体の健康にもよくありません。しかも、この2つの疾患は現在の治療法では治癒しません。

▽新生児医療が発達しました。そのことが、それまでは助からなかっただろう多くの命を救っていることは認めます。しかし、その陰で産婦人科医は、何をしているのでしょう。2つの疾患に対する治療法を開発する努力をすることもなく、自らの責任を回避するため赤ちゃんを早く娩出(分娩)させています。いうところの、「責任逃れ」をするようになっている、と私の目には映ります。

新生児医療の発達にも限界があります。高リスク新生児が病院を退院したら、サポート体制も不十分なまま在宅生活を強いられているのはその現れではないでしょうか。いまこそ、産婦人科医が立ち上がって、妊娠時の“難病”、早産や妊娠高血圧症の治療法に取り組み、一人でも多くの健康な赤ちゃんの誕生に貢献する時期だと思っています。