▽早産は正期産(妊娠370日~妊娠416日)以前の出生をいいます。 日本では妊娠220日~妊娠366日の出産を早産と呼んでいます。 世界中の妊娠の5~13%が早産です。 早産は新生児が死亡する主因で新生児死亡の28%に関与しています。 生き延びることができても、早産で生まれた子供は呼吸器トラブルや脳性小児マヒ、知的障害といった健康問題で生涯悩まされがちになります。わずか2~3週の早産であっても、正期産で生まれた子供に比べて、入院したり病気になったりするリスクが高くなります。

▽現在の早産治療薬は、このブログで度々取り上げてきましたベータ2刺激剤です。基本的に喘息治療薬と変わりません。子宮の“張り止め”として広く使われているウテメリンは最初に認可された早産治療薬です。それでは、早産治療薬は早産を防止しているのでしょうか?

 

厚生労働省人口動態統計の低体重出生児の割合を示す1980年から2009年までのグラフがあります(グラフ)。 これを見ると、その割合は年々増加の一途をたどっています。一体、どういうことなのでしょう。一つ目は、ベータ2刺激剤の治療は効果がない。二つ目は、効果はあるものの、人工的な早産が増えている、ということでしょうか。

 

▽一つ目は、さすがに考えにくいと思います。二つ目として考えられるのが妊娠高血圧症です。妊娠高血圧症は高血圧が主症状ですが、切迫早産(子宮収縮)を合併する場合がしばしばあります。この病気は治療薬がないと言っても過言ではありません。非妊娠時に一般的に使用される降圧剤は、ほとんど効果がありません。むろん、血圧が急激に上昇すれば、降圧剤を使用せざるを得ません。しかし降圧効果は一過性で、産婦人科医は妊娠高血圧症の母児への危険を避けて、妊娠週数を無視して帝王切開術で早産させます。産婦人科医は、防御医療ともいえる人工早産で妊娠高血圧症に対処しているのが現状です。

1980年代以前から続く、この人工早産が増加の一途を辿る早産件数の原因の一つでしょう。

 

▽早産を防ぐべく、切迫早産に対して数々の治療が試みられてきました。例えば、ウテメリン塩酸リトドリン)は1985年、産科に使われるようになりました。グラフを見て頂ければ明らかですが、ウテメリンが広く使用されてからも早産はどんどん増えています。次に2000年ごろから硫酸マグネシウムが早産の治療薬として産科で広く使われるようになりました。グラフから分かるように、硫酸マグネシウムが登場してからも、早産は増え続けています。この事実はウテメリンも、硫酸マグネシウムも、二つ目の早産治療に根本的な解決をもたらしていない事を証明しています。

▽2003年ごろから、早産治療に黄体ホルモン(プロゲストロン)が再び使用され始めました(50年以上前は黄体ホルモンが早産治療薬の主流でした)。そのころから、やっと早産の増加に初めて歯止めがかかり、2008年ころから、早産は減少傾向になりました。

▽ウテメリンや硫酸マグネシウムの母児への副作用が、いかに重いかは、このブログでも何度も指摘してきました。ウテメリンや硫酸マグネシウムの母児への副作用の啓発を目的として、私は「NPO法人妊娠中毒症と切迫早産の胎児と母体を守る会」を立ち上げて活動しています。NPOは、もう一つの目標を掲げています。黄体ホルモンの分泌に伴って胎盤から増えてくる胎盤酵素の製剤化です。ブログをお読みの皆様には、是非とも私たちのNPOへのご理解とご支援を切にお願いいたします。

 

臨床婦人科産科vol71no1 2017_1

リトドリン