▽フジテレビ系「とくダネ!」のコメンテーターで産婦人科医の宋美玄氏が8月29日、ツイッターを更新。第1子の妊娠が報じられた女優相武紗季さんのインタビュー記事を取り上げて、「やめて!こういうインタビュー」とツイートしました。

 

▽相武さんは、雑誌のインタビューでマタニティライフを紹介し、出産前にやっておきたいことに「旅行」を挙げていました。出産後は育児にかかりきりになることや、子連れで行ける場所も限られていることからだとみられ、今は国内外の旅行に出掛けて、「思い出を作りたい」そうです。

 

▽宋氏は、その記事をツイッターに添付し、「やめて!こういうインタビュー」とツイートしたのです。翌30日にもツイッターを更新し、「産んだら何も出来ないから、今のうちにという発想が一般的になってしまっているのだと思うけど」とつぶやいていました。多少なりともリスクを伴う頻繁なマタニティ旅行(マタ旅)よりも、出産後の旅行の楽しさを伝えてほしいと訴えています。

 

▽「多少なりともリスクを伴う頻繁なマタニティ旅行」と、孫氏は“遠慮”されていますが、私はハッキリ、「リスクの多いマタ旅」と言います。早産や流産の原因は不明とされています。しかし長い臨床経験によると、早産や流産される妊婦さんの多くは、1.終日 立ち仕事をしている。2.通勤に片道1時間かかる。3.休日に休まずに外出ばかりする-という共通項があります。このようなライフスタイルの妊婦さんは、早産や流産となる確率が極めて高いのです。どうしてかというと、お腹の中の赤ちゃんがストレス状態になり易いからです。

 

▽以前のブログ「高層マンション症候群」で指摘したが、分娩予定日を過ぎて陣痛が起こらない妊婦さんには大変効果のある陣痛誘発法を勧めます。その方法は、1)まず自宅で長風呂する。2)病院の階段(5-6階)の上り降り-です。

 

▽1)の長風呂は、温まることで妊婦さんの全身の血流、特に体表面の血流が盛んになります。その結果、比較的胎児への血流が減少します。即ち胎児への酸素供給が少なくなり、胎児はストレス状態になります。

▽2)の病院の階段(5-6階)の上り降りも、長風呂と同じ理由で妊娠末期のお腹の大きな妊婦さんが上り降りするのは実に大変です。足の筋肉を中心に血流が盛んになり、その結果、比較的胎児への血流が減少します。即ち胎児への酸素供給が減って、胎児はストレス状態に陥ります。

 

▽どちらにも共通するのは、胎児への血流減少で酸素不足がおこり、陣痛が起こることです。早産や流産も、基本的には陣痛発来と一緒で胎児がストレス状態で増やすホルモン「バゾプレシン」が引き金となっていると考えています。

 

▽この陣痛誘発法は、産科臨床50年の経験で大変効果的な陣痛誘発法でした。マタ旅は、まさに胎児にストレス状態を与えことにほかなりません。相武さんは旅を楽しんでおられても、お腹の赤ちゃんにはストレスがかかっているのです。

 

▽最近、妊婦さん向けの啓蒙書のほとんどは、妊娠の生理を理解していない方々が書いているように思えます。妊婦さんに流産の危険性の高い生活様式を勧めている内容が少なくありません。妊婦さん向けの豪華ツアーを企画する旅行社もあると聞きます。出版社も旅行代理店も、妊婦さんやお腹の赤ちゃんのことを真剣に考えているのでしょうか。妊娠中の“無用の旅”は論外でしょう。