前回と前々回のブログで、妊婦の早産治療にベータ2刺激剤の「ウテメリン」を長期間使用すると、お腹の赤ちゃんが5歳になった時、ウテメリンを使われなかった妊婦の子供に比べると、小児喘息になる確率が2倍以上ある、という国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)が発表したプレスリリースをご紹介しました。何度も指摘していますが、「ウテメリン」などベータ刺激剤が妊婦の早産治療に長期かつ大量に使われているのは、世界でも日本だけです。世界ではほとんど使われていないのが実態なのです。

 

 そのベータ2刺激剤による副作用の一端を、日本を代表する高度医療機関の1つ、国立成育医療研究センターが明らかにした影響は小さくないでしょう。現在の産科医療のあり方を変革する端緒になればと願っています。

さて前回のブログでも少し触れましたが、ウテメリンの副作用は小児喘息にとどまりません。ウテメリンを長期投与された妊婦の子供はうつ病になり易いのです。これも世界では周知の事実ですが、なかなか日本では理解が進んでいません。 米国は、妊婦へのベータ刺激剤の使用を厳しく制限しています。その根拠の一つは、ベータ刺激剤の投与とその児のうつ(鬱)病発症の因果関係が高いためと考えられています。米国のベータ刺激剤は、「テルブタリン」と言います。テルブタリンは、ウテメリンよりも動悸などの副作用が少なく、安全性が高いというデータがあります。しかし日本では、なぜかウテメリンが認可され、使用されています。米国では、テルブタリンさえ使用制限されているのにです。おかしいと思いませんか。

▽米国が妊婦へのベータ2刺激剤の使用を厳しく制限した、もう一つの大きな根拠は、私が度々述べてきましたウテメリン使用による母児への心臓毒性の問題と推定されるます。ブログの講座Nо.53で述べた拡張型小児心筋症「大林夏奈ちゃんの心臓移植」を是非お読みください。


▽さらに早産治療へのベータ2刺激剤の使用は、胎児のみならず、母体の分娩後の心筋症の原因の一つとも考えられています。この問題に関しては、ブログ講座
Nо.15(2014年6月1日)の「最近米国で産褥心筋症が増えています」をお読みください。
早産治療でベータ-2刺激剤の使用と拡張型小児心筋症に関しては、
2012年7月12日のブログ「切迫早産薬(ベータ剤)と拡張型心筋症」など多数書いています。

  今回国立成育医療研究センターの発表を機に、米国がベータ2刺激剤「テルブタリン」の妊婦への使用を制限する根拠になったと考えられる論文の一つを読み返しました(文献)。「テルブタリンで早産治療を受けた2卵生双生児で、胎児の脳の発達プログラムが障害され、生まれてきた子供が鬱病になる」というのが論文の趣旨です。早産治療にベータ2刺激剤を使用すると、その児が鬱になる可能性が高まるのは、この論文からも明らかです。

国は、若者の自殺原因をまとめて発表するばかりでなく、どうして自閉症が年々増えているのか、うつ病が多くなっているのか、など妊婦へのウテメリン使用による副作用(薬害?)ともいえる諸問題を真剣に考えるべき時が来ていると思います。


   文献:Connors, S.L.et al. J Child Neurol  2005;20:876-884