過去のブログ115で「子宮頸がんワクチン中止継続を求める「全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)」は、薬害根絶のための要望書を厚生労働大臣に手渡した。接種後の健康被害が報告されている子宮頸(けい)がんワクチンの積極的勧奨の中止継続や、医薬品副作用被害救済制度の充実などを求めた事を述べました。

薬被連が如何に愚かな要望を国にしたのかを明らかにする論文が最近出ましたのでご紹介します。

ヒトパピローマウイルス(HPVワクチン接種が世界で開始されて10年以上が経過し、現在、99の国と地域で接種プログラムが導入されております。この多数例のワクチン接種の検討結果がLancet誌オンライン版2019626日号に報告されました(文献)

その内容です。HPVワクチン接種プログラムは、女性のHPV感染および子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)*Grade2(中等度)以上の異形成(2+)を抑制し、男女の肛門性器疣贅**を減少させることを示す明らかな成績が、カナダ・ラヴァル大学のMelanie Drolet氏らによる6,000万人以上を最長8年間追跡したデータのメタ解析***の検討結果からです。

研究グループは、14ヵ国(高所得国)の最長8年時のデータを解析しました。その結果一般集団において、ワクチン接種前後の期間で、1つ以上のHPVに関連する病変1.HPV性器感染、2.肛門性器疣贅の診断、3.子宮頚部の組織検査でCIN2+の頻度が明らかに減少する事が明らかになりました。

 

ワクチン接種後58年の期間に、HPV 16/18 **の有病率は1319歳の女性で83%(RR0.1795%信頼区間[CI]0.110.25)、2024歳の女性では66%(0.340.230.49)、それぞれ有意に低下した。

そのほとんどがワクチン接種を受けていない2529歳の女性では、14年の期間ではHPV 16/18型の有病率に有意な差は認めなかった(0.860.691.07)のに対し、58年後には37%(0.630.410.97)有意に低下しており、集団免疫効果が示唆された。

また、ワクチン接種後58年の期間に、HPV 31/33/45型の有病率は1319歳の女性で54%(RR0.4695CI0.330.66)有意に低下したが、2024歳の女性では有意な差はみられなかった(0.720.471.10)。20歳以下の若い人にはワクチンが対象としていない
子宮頸がん発生に関連するHPV型の感染も減らしているのです。

 肛門性器疣贅の診断は、ワクチン接種後58年の期間に、1519歳の女性で67%(RR0.3395CI0.240.46)、2024歳の女性で54%(0.460.360.60)、2529歳の女性では31%(0.690.530.89)、それぞれ有意に低下した。また、ワクチン接種を受けていない1519歳の男性でも48%(0.520.370.75)、2024歳の男性では32%(0.680.470.98)、それぞれ有意に低下しており、集団免疫効果が示唆された。

 ワクチン接種後59年間に、CIN2+1519歳の女性で51%(RR0.4995CI0.420.58)、2024歳の女性では31%(0.690.570.84)、それぞれ有意に低下した。これに対し、同時期に、そのほとんどがワクチン接種を受けていない2529歳の女性では、CIN2+19%(1.191.061.32)有意に増加し、3039歳の女性でも23%(1.231.131.34)有意に増加した。

子宮頸がんの原因(高リスクのHPV感染)とその病変(CIN2+)の双方が有意に減少したことから、HPVワクチン接種の実施により、子宮頸がんが予防されたことを示す強固なエビデンスがもたらされたと著者らは述べています。また複数集団へのワクチン接種と高い接種率によって、より大きな直接効果と集団免疫効果がもたらされた事も指摘します。

 

 

文献Drolet M, et al. Lancet. 2019 Jun 26. [Epub ahead of print]

 

 

*CIN:子宮頸部を覆っている薄い表面の組織の細胞に異常な細胞が増殖する状態。この異常な細胞悪性(がん)ではないが、のちにがん化する可能性がある。

**肛門性器疣贅:HPVの感染でおこる性器にできる、目で見て確認しやすいいぼ。

 

***メタ解析:複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のことである。メタ分析メタ解析とも言う。

HPV 16/18型* **子宮頸癌発生に関連するHPV13種類(16183133353945515256585968)であるとされハイリスク型と呼ばれています。このほかに良性病変である疣やコンジローマの原因となる2種類の型(611)の感染が日常の臨床上で問題となります。